ウクライナ戦争と日中戦争―その類似性と危険性

ウクライナ戦争と日中戦争―三つの類似点

今年2月に始まったウクライナ戦争は、2ヵ月以上たっても収束するどころか長期戦の様相を呈してきた。歴史的に考察すると、ウクライナ戦争は日中戦争と三つの点で類似していると言える。

先ず第一は、「成功事例」の再現をねらった軍事大国による隣国への侵略戦争という点である。

かつての日本の場合、1931年の「満州事変」と「満州国」の成立が、天皇も含めて多くの国家指導者・軍人たちに「成功事例」と受け止められた。そして、第二の「満州国」を作るべく華北分離工作を仕掛けている時に、盧溝橋事件(1937年)が勃発して、そのまま中国に対する全面的な侵略戦争へと突き進んだ。

今回のロシアの場合も、2014年のクリミア併合が、国家指導者にとっては「成功事例」ととらえられていたのであろう。その再現をねらってロシアはウクライナ東部の占領・併合をめざしいると思われる。直近の「成功事例」の再現をめざした侵略という点でウクライナ戦争と日中戦争は、その始まり方において共通している。

そして第二の類似点は、最初の一撃で相手を屈服させるいう軍事大国側の目論見が大きく外れた点である。

日中戦争の場合、「満州事変」段階とは異なり国共合作が成立して、中国側は一丸となって日本軍に抵抗し、長期戦となった。ウクライナでもロシア側は首都に軍事的圧力を加えることで早期の戦争終結を目論んだものと思われるが、それは失敗した。だが、ここで注意を要するのは、長期戦に移行したのは、侵略された側が団結したということもあるが、諸外国がかつては中国を、現在ではウクライナを兵器・物資・財政面で支援したということである。日中戦争では「援蒋ルート」が設定されたし、今回の戦争でも隣接諸国を通じての軍事支援が次第に大規模化している。これは、侵略側の企図を挫折させる反面、一般民衆を長期間にわたって危険にさらすという極めて深刻な状態をもたらしている。

第三の類似点は、戦争への対応(どちらの側を支持・支援するか)をめぐって世界が二分化されているということだ。

日中戦争の場合、日本は欧米諸国の中国援助を封ずるためにドイツ・イタリアと手を結んで英米陣営に対抗し、結局、世界戦争まで突き進んだ。今回の場合も世界は、反ロシアと親ロシアに分裂しつつある。軍事と経済が相まって、さらに大規模な対立を生みかねない、極めて危険な状態となっていると言わざるを得ない。これ以上の戦争の長期化と、対立の拡大をなんとか外交的努力によって収束することに力を注ぐ必要があろう。(山田朗明治大学平和教育登戸研究所資料館長、日中友好新聞2022年5月15日号より)

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