厳しい感染チェックや外出制限など、新型コロナ感染症封じ込めの「ゼロコロナ政策」を続けてきた中国政府が方針を大転換した。外から見ると、いかにも極端な方針転換だが、冷静にみると、「流れ」に柔軟な大国・中国の党の「舵取り」といっていい。実際の生活はどうなって、コロナウイルスをうまく抑え込めるか、そこが重要だ。
報道によると、中国・国家衛生健康委員会が12月7日に発表したコロナ対策緩和策は、①健康コードの廃止②自宅での隔離が可能に③ロックダウンの制限➃ワクチン接種の推進⑤国内移動の規制緩和―など。すでに11月に指示された20項目に続き、10項目にわたり「感染防止と経済社会の発展のよりよい調整」の方針を示した。感染しても無症状なら自宅療養が可能になり、「陰性照明」がないと店に入れなかったりした事態がなくなるなど、国民にとっては、当然の「朗報」だろう。
契機になったのは、新疆ウイグル自治区のウルムチで11月24日、マンション火災が起き、街の「封鎖」で消火や避難が遅れたため、19人が死傷した事件。抗議デモが上海、武漢、成都、北京と広がり、「行動の自由」の要求は、言論・表現の自由を掲げる動きに発展。「習近平は下野せよ」のスローガンまで登場した。もともと「百花斉放」、「ことば」と「常識」の国でもある。言い方を変えれば、極端な封鎖や行動制限の方が異常だった。
「文革」(1966年~76年)直後の中国で25年も村長をしているという男性に会った。中央権力が次々変わり、方針は変わる。「どう対応したか」と聞くと、彼曰く、「ある時は従い、ある時は反対意見を言い、ある時は忘れて、黙っていました・・・」。大国・中国の政策決定は、どうしても大きな基本を打ち出しながら、具体的には地方政府に任せ、その土地、その時の状況にあった政策で、方針を決めていかざるを得ない。一方メディアの報道は、その大きな方向を見極めながら、それぞれの「土地」と「いま」を伝えることからしか始まらない。「コロナ対策」には世界中が悩んでいる。(丸山重威・ジャーナリスト、日中友好新聞「中国レーダー」より・写真は共同ニュース)