「撒」と「洒」と「澆」
中国では豆やビラを撒く時は「撒豆」「撒伝単」というが、水を撒く時は「洒水」または「澆水」という。どう違うのだろうか。
「撒く」は「手」と「散」からなり、手で撒き散らすという意味だ。昔は「散」の字を使っていた。日本では今も「散水」という。でも人が手で撒くことができるのは、豆やビラなどの個体である。「散水」といっても実際は、手ではなく、如雨露(じょうろ)や柄杓(ひしゃく)で撒いている。だから中国では液体を撒く時はあまり「撒」は用いない。
液体の撒き方にも、いろいろある。「洒」は「水」と「西」からなる。「西」は酒を漉すための竹籠だ。竹籠は目がたくさんあり、漉された酒はあちこちの目から散らばって落ちる。庭でも道でも畑でも、広い所にあちこち水を撒き散らすのが「洒」である。
一方、「澆」は「水」と「堯」からなる。「堯」は土を高く盛り上げた様子を指し、「澆」は高い所から一か所に水が注ぎこまれることだ。「澆」は、日本語でいえば「注ぐ」に近い。「澆花(花の水やり)、「火上澆油(火に油を注ぐ)」のように用いる。中国語が母語であれば無意識に使い分けているが、外国語学習では使い分けが急に難しくなる。(佟岩先生:西日本華文教育者協会理事・日中友好協会兵庫県連合会中国語講座講師)
「日中友好新聞」(月2回発行、購読料400円/月、送料126円)2021年10月15日号より抜粋