前赤旗北京特派員が中国を語る

中国社会の変化―技術で生活が一変

2012年6月~2017年12月まで北京に在住し、中国の各分野、各地で取材活動を続けてこられた赤旗・前北京特派員の小林拓也記者が10月20日、神戸市内で中国の現状と日中友好について講演しました

中国の四大発明として、高速鉄道・スマホ決済・シェア自転車・ネットショッピングの現状を紹介。中国に住んで非常に暮らしやすい社会を実感。現金なし、全てインターネットで生活できる。しかしシェア経済もバラ色ではない。不動産、物価はすごい勢いで上昇。家族経営の商店などが姿を消し、チェーン店に変わり、生活に密着した店がつぶれる。ネットでの買い物でしか手に入らない。北京では出稼ぎ労働者を追い出し、強制的にきれいな街並みに変えているという。空港や駅での荷物検査が厳しく、地下鉄に乗るにも荷物検査があり、身分証明書が必要。日本のマイナンバー制度の未来を連想させる。

改革開放から40年、マイナス面が噴出

腐敗、環境汚染、貧富の格差、経済の質でマイナス面が2013年頃から一気に噴出。習近平政権が向き合うことになった。どう解決するのか。三大堅塁攻略戦として①経済・金融リスクの防止と解消②貧困脱却。2020年までに貧困人口をゼロに③汚染対策。大気汚染、水質・土壌汚染、森林保護を目指している。

社会への管理強まる。言論・メディア・インターネットの統制

携帯電話、インターネット、SNSの実名登録制、AI、ビッグデータを利用した管理、ほぼ独自報道がなくなった新聞。厳しいネットメディアへの規制、微博、微信は規制。Line、Facebook、Twiterなどは全て規制されている。社会を乱すものは許さないということで民主・人権活動を弾圧。テロ対策として、新疆ウイグル自治区でウイグル族ら100万人を拘束し、「再教育」。以前は代表的人物だけを拘束していたが、この5年間は誰でも連行され、集まって活動することは出来ない。

中国は「社会主義をめざす国」か

中国の特色ある社会主義の本質的特徴は、中国共産党の指導。社会主義核心価値観(富強、民主、文明、和諧、自由、平等、公正、法治、愛国、敬業、誠信、友善)。中国経済は規制が殆んどない自由経済。労働者の権利を守るルールが殆んどない。

習近平指導部のもとでの中国政治の変化

習近平独自の戦略を発表・・「中華民族の偉大な復興実現の中国の夢」「五位一帯(経済建設、政治建設、文化建設、社会建設、生体文明建設)の統一的推進」「四つの全面(小康社会の全面的完成、改革の全面的進化、全面的な法に基づく国家統治、全面的な厳しい党内統治)の推進」「四つの意識(政治意識、大局意識、核心意識、一致意識)」「四つの自信(道路の自信、理論の自信、制度の自信、文化の自信)の確立」「習近平による新時代の中国の特色ある社会主義思想」を提唱。空前の反腐敗闘争・第18回党大会で強い危機感を表明した。党大会、全人代で習氏を「人民領袖」と呼ぶことが定着。習近平への権力集中、個人崇拝が懸念される。個人崇拝を批判する文章もあり、最近は過剰なスローガンは少なくなっている。

第19回党大会、3月の両会で示した今後の方向性

「習近平による新時代の中国の特色ある社会主義思想」を党の「行動指針」として党章(党規約)に書き込む。14年ぶりに憲法を改正。国家主席と副主席の「2期10年」の任期制限の撤廃、第1条に「中国共産党の指導は中国の特色ある社会主義の本質的特徴」を追加。党が国・地方政府を指導する。公務員の人事、出版・新聞は党の管理下に置く。アヘン戦争以後、虐げられてきた中華民族が再び世界で輝く。カギは中台の統一、祖国の完全統一は、中華民族の偉大な復興の必然的要求。

安定を望む世論と懸念する知識人

庶民は改憲に興味がない。そもそも憲法を知らない、関心があるのは年金や医療、子供の教育や結婚問題。問題を解決するために強い政権による安定が必要との声は根強い。中国では、強いリーダーが必要だという声が多い。国内の安定、2020年の小康社会の全面的実現、経済の転換、脱貧困、環境保護、中台の統一、外交政策で強いリーダーを求めている。

日中友好をどうつくっていくか

反日デモから6年が経つ、日本のテレビではすべての中国人が反日デモをしているかのように描いていたが、北京では日本大使館以外は静かだった。日本人が理解すべきは、中国国民の怒りの根底に歴史問題があり、尖閣問題と歴史問題は結び付いている。抗日戦争勝利記念日(9月3日)、南京大虐殺記念日(12月13日)が国家哀悼日になった。南京は、「国際平和都市協会」に加盟し、南京大虐殺を人類史の教訓として、世界平和に貢献していく決意。中国では未来を見据えた新しい動きが始まっている。日中関係は表面上回復軌道に乗っているように見えるが日中の構造的矛盾は解決していない。そして安倍政権の改憲を警戒している。台頭する中国とどう向き合うかが、これからの日本の課題である。(講演内容より)

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