韓国併合時の教育にも利用された漢詩

「少年老い易く学成り難し」の作者は日本の僧侶か?

6月19日に開催された漢詩を読む会は、「『少年老い易く学成り難し』の作者について」をテーマに、丹羽博之大手前大学総合文化学部教授が講義しました。

丹羽教授は、学校の漢文授業でこの詩は朱子の作と習ったが今では朱子の作ではないというのが定説で、日本人の偽作と言われています。朝倉和氏の国文学攷一八五号の「『少年老い易く学成り難し』詩の作者は観中中諦か」を紹介、その中で朝倉氏は、この詩は漢文入門の教材として広く人々に知られ起承句が慣用句として親しまれている。この「偶成」詩は、実は朱子(朱熹、1130~1200)の作ではなく、和製で、しかも近世初期以前の禅林僧侶の手に成るか、とセンセーショナルな発表をされたのは、柳瀬喜代志氏である。さらに、岩山泰三氏は、この詩は朱熹の詩文集に見られず、室町前期の五山詩を集成した「翰林五鳳集ー三七」に「進学軒」の題で五山僧、惟肖得巌(1360~1437)の作として収録されているこを指摘された、と記されていることを紹介しています。また柳瀬氏、岩山氏の説は出典の認定が異なっており、この作者問題はいまだに流動的で、決着がついていないような印象を受けるとも述べています。

丹羽教授は、この詩は日本統治下の朝鮮半島でも広まり、朝鮮語の「勧学歌」(恐らく日本の役人の作)にも利用され、その歌詞と楽譜を紹介し、この歌を明治期の日本の唱歌軍歌「勇敢なる水兵」(明治28年頃)のメロディで歌わせ、朝鮮支配に利用していたのだろうと語りました。また21世紀のソウルの地下鉄駅にもこの詩が掲げてあったと写真を示しながら解説しました。

「漢詩を読む会」8月はお休みで次回は9月に開催します。

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