3期目に入った習近平体制と台湾有事

協会の井上会長が現在の情勢と友好運動を語る

1978年から2011年までの中国の平均経済成長率は9・7%でした。これは60年代の日本の高度経済成長を30年以上続けたことに匹敵します。これが可能になったのは、中国を取り巻く国際環境が比較的平和であったこと、先進諸国の技術や経験から学べるという後発の利点を指摘できます。また、中国の政治は確かに強権的ですが、社会は基本的に安定し、質の高い安価な労働力が豊富に存在していました。経済成長期の日本と類似しています。

10年代になり、高成長から中成長へと状況が変化してきました。国内の社会的格差の拡大、少子高齢化の進行などの難題ととに、対外的にアメリカとの対立が浮上してきたわけです。昨年10月の中国共産党20回大会で、習近平が3期目の総書記となり、今年3月の全人代で国家主席に就任しました。習体制は、新型コロナによるマイナスからの回復という喫緊の問題とともに、量から質へ経済成長の転換をはかりながら、社会の安定と秩序をいかに維持するかなど、多くの国内課題を抱えています。

習体制の下、政府に対する党の指導的立場の強化が進むと見られます。党の最高指導部を習近平と関係が強い人物でかためたことで、敏速な決定がしやすくなる反面、国民の多様な意見を政策にいかに反映できるか注目すべきでしょう。また国民の人権や言論の自由が拡大するかどうか、見守っていく必要があります。

昨年8月、ペロシ米下院議長が台湾を訪問したのに対し、中国は、「一つの中国」原則が「中国の核心的利益の中の核心」であるとして、台湾海峡周辺で大規模な軍事演習を実施しました。日本では、「台湾有事は日本有事」とか「ウクライナは明日の東アジア」などという危機を煽る物騒な表現が飛び交っています。安保関連3文書は、こうした文脈の中で強引に閣議決定されたわけです。

しかし、習新体制でも中国の立場はこれまでと変わらず、台湾の平和的統一をめざすということです。また、台湾の民意は、ペロシ訪台後の世論調査でも、86.3%が基本的に現状維持です。台湾が独立を宣言するようなことは、冷静に考えれば、まず考えられない想定なのです。危機を煽り、中国を念頭に大軍拡に走るのは、日本にとって愚策としか言いようがありません。(日中友好新聞5月1日号より、後半は「友好交流活動」のページで紹介します)

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