24年も5%台の成長目標か、内需拡大策が課題
今年は、いきなり能登半島地震、日航機炎上で幕を開けるというショッキングな展開。昨23年の世界経済は、アメリカによる米中対立・中国包囲網の形成、ウクライナ戦争の長期化とパレスチナ戦争の勃発で混迷を深めた。好調で世界経済を牽引しているのは、緒紛争の圏外にあるインドをはじめとするアジア経済である。
中国経済は、住宅・不動産危機の継続で難局下にあるが、それでもインドに次ぐ5・3%前後の成長達成の強靭を維持している。23年の11月までの統計では、工業生産4・3%増、小売高7・2%増、貿易5.6%減で、米中、日中貿易は2桁減である。中国経済の日本化(長期停滞)やソ連化(行政的計画経済への回帰)を語る向きがあるが、いずれもピント外れでしょう。電気自動車、再生エネルギー、航空機、半導体など、新興産業の高い成長が支えている。
しかし、中国経済が難局にあることは変わらない。住宅・不動産危機、地方財政危機解決の十分な対策は打ち出されていない。中期の経済発展方針を打ち出すはずの20期3中全会は意思統一が難しいためか、昨秋に開催されず延期となっている。24年方針を定める中央経済工作会議は12月中旬に開催され、かなり厳しい現状認識が示され、高質発展、有効需要・財政支出の拡大など9項目の経済回復策を打ち出している。今後の推移に注目しておきたい。
23年は、アジア競技大会、第3回一帯一路サミットなど中国の活躍が目立った。米中、日中間の首脳級会談が開催されているが、対立解消には程遠く、デリスキング(リスク回避)の動きは持続すると見られている。BRICSの11ヵ国への拡大、上海協力機構(SCO)の拡大(イラン加入)、ドル離れなど、戦争にのめり込むG7 諸国の影響力低下の流れとなっており、24年もこの趨勢が続くと見られる。
23年の異変は、出生人口の引き続く急減(900万人を割り込む可能性)、対内直接投資の1割減、米中および日中貿易の1割強の減少であろう。住宅・不動産危機は継続しているが、対策は小出しである。15年ほどは住宅価格が低下していないためであろう。自動車輸出が世界一に踊り出たこと、大型航空機の就航開始などは好調面である。今年も5%前後の成長目標を掲げそうである。住宅・不動産危機や地方財政危機は持続し、貿易の大幅拡大は期待できないため、内需拡大策が課題となる。(井手啓二長崎大学・立命館大学名誉教授、日中友好新聞2月1日号中国レーダーより)