日米共同声明に「台湾海峡の平和と安定」の重要性強調
昨年4月、菅前首相とバイデン米大統領との間で「日米共同声明」が出されました。「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す」という一文を書き込みました。日米共同声明に台湾問題を明記するのは日中国交正常化以来なかったことです。
日本のメディアは中国の動向、脅威を報じ海峡の危機を煽る
昨年の自民党総裁選で、高市早苗氏なども中国の軍事的脅威を強調しながら、日本の防衛予算の大幅拡大を主張していました。また、日本のメディアは中国軍の動向や、その脅威を報じ、台湾海峡の危機が煽られています。
台湾政府が「台湾独立を正式に宣言」することが最も危険
中華人民共和国の立場は、台湾は中国の一つの省ということで、台湾を統一したいわけです。米国も日本もこの中国の立場を理解して国交を正常化し今日に至っています。台湾問題で最も危険なのは、台湾政府が中国から独立を正式に宣言することです。この時には、中国が本当に武力を使い、血が流れる可能性があります。
台湾の世論は「現状維持」が圧倒的多数
では、そんな恐ろしいことが起こる可能性が、にわかに高まっているのでしょうか。台湾の内閣にあたる行政院の大陸委員会が毎年、中国大陸との関係についての世論調査を発表しています。2021年9月の調査では、「すみやかに独立すべき」と答えたのは、6・6%にすぎません。過去の調査でも「すみやかに独立」が、台湾世論の1割を超えたことはないのです。85%は基本的に現状維持なのです。これが重要です。
台湾住民の多数は戦争の危機を感じていない
台湾の民意が、すぐに独立を求めているわけではありません。独立指向が強いといわれる民進党の蔡英文政権でさえ、「統一はしない」と主張していますが「独立する」とは言っていないのです。基本的に事態を冷静に見ているわけです。昨年10月に台湾民意基金会が行った世論調査では、「台湾海峡で遅かれ早かれ戦争が起き、大陸から攻めて来ると思うか」という質問に、64%が「そうは思わない」と答えている。「そう思う」と答えた人は28%にすぎません。台湾の人々は意外に戦争の危機を感じていません。
台湾問題は中国の国内問題、原点を忘れてはならない
確かに今日、中国の経済成長につれて軍事力も大きくなり、質的変化も見られます。私たちはもう一度、台湾問題の原点を確認すべきだと思います。それは、日本が日清戦争(1894~95年)から50年間、台湾住民の意思を無視して植民地支配をしてきたこと、ポツダム宣言を受諾して中国に返還された後の台湾の処遇は、中国の国内問題であるということです。この原点は決して忘れるべきではありません。(写真・井上久士日中友好協会会長、駿河台大学名誉教授、日中友好新聞2022年2月1日号より)