戦争で苦しむのは、いつの時代も民衆である

中国反戦詩の伝統~古代から「原爆行」まで

第18回「漢詩を読む会」が8月10日午後、猛暑の中で開催されました。今回のテーマは土田竹雨(名は久泰 1887~1958)の「原爆行」。講師の丹羽博之大手前大学教授が当日取り上げた題材(資料)は2003年6月1日の「月間しにか」161号に書かれた故・一海知義氏の「中国反戦詩の伝統」古代から「原爆行」まで。詩を読む前に少しその前文を紹介します。

「一将功成って万骨枯る」。一人の将軍が手柄を立てる時、そのかげでは、何万という兵士が戦死し、その骨が朽ち果ててゆくのだから。この詩の作者曹松は、反戦詩人ではない。その彼がこの名セリフを後世に遺したのは、戦争の悲惨を、詩人が冷静に客観的に見つめることができたからであろう。時代が唐から宋、元、明、清と降って行っても反戦詩の伝統は消えず、少なからぬ詩人が作品を残している。中国二千年の伝統をふまえて、現代日本の漢詩人も反戦の詩を作っている。

「原爆行」―原爆の行(うた)作者・土田竹雨

怪光一綫下蒼旻  怪光一綫 蒼旻より下り

忽然地震天日昏  忽然として地震い 天日昏し  

一刹那間陵谷変  一刹那の間 陵谷変じ

城市台樹帰灰燼  城市台樹 灰燼に帰す

此日死者三十万  此の日 死者三十万

生者被創悲且呻  生者は創を被り 悲しみ且つ呻く

死生茫茫不可識  死生茫茫として 識る可からず

妻求其夫児覓親  妻は其の夫を求め 児は親を覓む

阿鼻叫喚動天地  阿鼻叫喚 天地に動し

陌頭血流屍横陳  陌頭 血流れて 屍 横陳す

殉難殞命非戦士  殉難して命を殞すは 戦士に非ず

被害総是無辜民  害を被るは 総て是無辜の民

広陵惨禍未曾有  広陵の惨禍 未だ曾て有らざるに

胡軍更襲崎陽津  胡軍更に襲う 崎陽の津

二都荒涼鶏犬尽  二都荒涼として鶏犬尽き

壊牆墜瓦不見人  壊牆墜瓦 人を見ず

如是残虐天所怒  是の如き残虐は 天の怒る所

驕暴更過狼虎秦  驕暴更に過ぐ 狼虎の秦

君不聞啾啾鬼哭夜達旦 君聞かずや 啾啾たる鬼哭 夜より旦に達するを 

残郭雨暗飛青燐   残郭 雨暗くして 青燐飛ぶ

次回第19回「漢詩を読む会」は10月19日(土)です。

中国舞踊活動20周年記念公演

楊貴妃を演じる胡紅侶さんの舞踊に感動!

7月29日(月)夕、舞踊家・舞姫こころさんの中国舞踊活動20周年記念公演が神戸文化ホール・中ホールで開催され、約600人が鑑賞しました。開催にあたり後援7団体を代表し日中友好協会兵庫県連合会の前田清会長が祝辞を述べ20周年を祝福しました。(上:開会にあたり祝辞を述べる前田会長)

胡紅侶(こころ)さんは、中国広東省中山市の生まれ、3歳の時からバレエと中国舞踊を始め、9歳から北京舞踊学院付属学校に入り本格的に中国舞踊を学びました。また、北京舞踊学院と北京民族大学で舞踊振付を学ぶ。中国国内で何度も舞踊優勝賞を獲得。1989年に来日。その後、ニューヨークに渡り、ジャズ・タップモダンダンス、バレエを深く研究。1999年1月23日に神戸市で初リサイタルを開催し、大きな反響を呼びました。

その後も2~3年に一度神戸、大阪、京都でリサイタルを開き、今年7月29日に20周年記念感謝公演の開催に至っています。記念公演では胡紅侶さん演じる楊貴妃が宮廷へ入るところから始まり、唐の玄宗皇帝から寵愛を一身に受け毎日のように甘い酒に酔い歌い踊る姿を舞台いっぱいに演じていました。天宝14年(元紀755年)安緑山の反乱により、楊貴妃は賜死。美しい天女姿で空を翲翲起舞で第一幕。

第二幕は中日舞踊音楽コラボレーション、中国古典舞踊、中国福建省の民族衣装舞踊、台湾の原住民「高山青」台湾の伝統舞踊、琉球國祭り太鼓の素晴らしい演舞が舞台で演じられ客席から大きな拍手を受けていました。(公演が終わり出演者と共に、あいさつをするココロさん、前列中央)

中国緑茶の分類や入れ方の基本を学ぶ

中国茶全生産量の7割は緑茶

6大分類茶の中で一番長い歴史をもつとされる緑茶は、現在でも中国茶市場の中心的な存在で、中国茶全生産量の7割は緑茶が占めています。生産地は広域に渡り、中国茶4大生産域(江北、江南、西南、華南)の全てで、それぞれ特色ある緑茶が生産されています。

7月17日の「中国茶講座」は、中国政府認定「高級茶芸師・高級評茶員」の神田貴子講師が一般的な緑茶の製造工程や乾燥方法について詳しく解説し、緑茶の基本の入れ方と保存方法や効能などについて紹介。「本日の銘茶」と題し、安徽省の緑茶4種、浙江省の緑茶2種、河南省の緑茶1種について産地や茶葉の摘み取り方、製法などを紹介、それぞれの茶を入れて、試飲しながら湯色や香り、茶葉の形状などについて説明しました。

緑茶は、漢方では涼性に属し、身体を冷やす効果があります。温かいお茶でも効果があるので、胃腸に負担をかけずに体の熱をとることができます。春先から夏にかけて飲むのに適していると言われています。期待される効果として、殺菌作用による食中毒対策・口臭予防・風邪予防、アンチエイジング効果、免疫力アップなど。(写真上:7月17日の講座風景、写真下は安徽省の緑茶:左・特級  黄山毛峰、右・太平猴魁の茶葉)

8月はお休みで、次回は9月18日(水)に開催します。

兵庫県連合会が第65回大会開く

憲法改悪NO!「日中不再戦」の決意新たに

日中友好協会兵庫県連合会は6月23日、神戸市内で第65回大会を開催しました。大会には、友好団体や地元神戸市議、中国留学生の来賓からあいさつを頂き、中華人民共和国駐大阪総領事館の李天然総領事をはじめ、兵庫県議会議長、宝塚・芦屋・明石・加古川・赤穂の5市長、協会内外の23団体から祝電、メッセージが寄せられました。

大会は、2018年度活動のまとめと2019年度の課題、新役員、決算・予算、監査報告などの諸議題が提案され討議しました。参加者から9人が発言、「2018年度の会員拡大行動の経験」「第68回全国大会で学んだこと」「支部で中国語初級講座を始めた経験について」「中国百科検定と中国を知る学習会」などのテーマで熱心な討議が続き、会場からは笑いや拍手が起こりました。

討議のまとめに続き、諸議案を採択、2019年度の新役員を選出しました。最後に、協会創立の精神「日中不再戦」の原点に立ち、憲法改悪を許さない不再戦平和活動の展開、民間の友好交流を広げ、日中両国民の信頼と絆を強める活動を発展させ、東アジアの平和と安全を促進するために全力を尽くす主旨の大会宣言を採択しました。(写真下:あいさつする中国留学生の白宇さん)

「自分でつくる八宝茶」を体験

体質に応じ材料をブレンドする

6月19日に開いた「中国茶講座」はこれまで最多の参加者がありました。神田貴子講師作成の11枚に及ぶ資料や解説を聞き、会場中央に並べられた八宝茶の材料から自分の体質に応じた材料を選び、それぞれ自分だけの八宝茶を楽しみました。

「八宝茶」とは、中国茶にナツメや龍眼、クコの実などの漢方生薬や、お花、ドライフルーツ、氷砂糖などをブレンドして作る健康茶のことです。八宝には、たくさんの種類という意味があり、必ずしも8種の材料という訳ではありません。それでも市販される八宝茶の多くは8~9種の材料から作られています。

もともと中国西方の回族の間で飲まれていたものが、シルクロードを通じて中国各地へ伝わったと言われています。材料の組み合わせは無数にあり、体調や季節、味の好みに合わせて自由にブレンドして楽しむことができます。八宝茶では、緑茶が多く使われ、他に白茶や青茶(烏龍茶)、紅茶、ジャスミン茶等でも使われます。お茶にもそれぞれ身体を冷やす涼性のお茶、身体を温める温性のお茶があります。(写真中央に並べられているのが八宝茶に使う材料)

次回「中国茶講座」は7月17日(水)午後1:30~

白楽天を慕う蘇軾は西湖に蘇堤を築く

白楽天により西湖の美しさが世に知られる

白楽天(772~846)は江州司馬(副知事)へ移動を命じられた。地方勤めは降格だが、俸給は大幅に増えた。西湖の美しさに魅せられ、詩を詠んでいる。白楽天により西湖の美しさが世に知られることとなる。善政を敷き、湖の改修を行い「白堤」と呼ばれている。

「春宵一刻直千金」で有名な蘇軾(1036~1101)は、西湖の地に二度赴任している。白楽天を敬慕していた蘇軾は、白楽天に倣い、朝廷に稟議書を提出し、朝廷から予算を取り付け西湖に「蘇堤」と呼ばれる大規模な堤を築いた。西湖は晴れて好し、雨もまた好し、中国4大美人の一人・西施に例え、薄化粧も好し、濃い化粧も好しと西湖の美しさを詠っている。湖畔には蘇軾記念館が建っている。

飲湖上初晴後雨 二首 其二 蘇軾(蘇東坡)

水光澰灔晴方好 水光瀲灔として晴れて方に好し

山色空濛雨亦奇 山色空濛として雨も亦奇なり

欲把西湖此西子 西湖を把って西子の比せんと欲すれば

淡粧濃抹總相宜 淡粧濃抹總べて相宜し

次回「漢詩を読む会」は8月10日(土)午後2時~

憲法9条改悪を阻止し、東アジアの平和と安定を促進

日中友好協会が第68回大会を開催

日本中国友好協会は6月1日、2日の両日、東京都内で第68回大会を開催し、全国から260人の代表が参加しました。大会は、朝鮮半島の非核化と平和構築に向け、関係各国の粘り強い努力と、日本国内の立憲主義、民主主義、平和主義を取り戻す闘い、消費税増税阻止などの闘いが展開される中開催されました。

大会は、現在、安倍首相らの侵略戦争を正当化する歴史認識及び軍備拡大と真正面から対峙し、侵略戦争の事実と教訓を語り伝える不再戦平和活動や、相互理解を促進し、友好の心情を高める文化活動、友好交流活動をはじめとする日中友好運動の役割が増々大きくなっていることを確認しました。

2日間にわたる各地の活動経験交流を通し、活動の主体である協会を強化するため、来年の協会創立70周年に向け組織と運動の拡大強化に全力で取り組むことを再確認しました。大会は提案された諸議案を可決し、2019年度の新役員を選出、大会宣言を拍手で採択しました。(写真上:大会風景、下:新会長に選出された井上久士氏)

7種の台湾茶を飲み比べ

違いや共通点に着目し試飲しながら理解深める

製茶の季節や製造方法の微妙な違い、天候などにより出来上がったお茶の印象は大きく変わります。台湾のお茶製造の現場では、茶樹の品種改良や、ブランド力のある新たなお茶が作られています。と高級茶芸師・高級評茶員の神田貴子講師は語ります。5月15日の「中国茶講座」では7種の台湾茶をテイスティングしながら台湾茶への理解を深め合いました。

先ず、烏龍茶・文山包種茶の春摘み茶と冬摘み茶を水出しで味わい、標高の高い産地で摘まれた梨山高山茶、夏に飛来するウンカという小さな虫に葉を噛ませ、独特な蜜香を生じ、甘く香りのよいお茶・凍項貴妃茶2種、凍項烏龍茶、最も紅茶に近いと言われ、バラの花や蜂蜜のような芳醇な香りと甘みが特徴の東方美人茶を試飲し、台湾と世界のお茶事情について学びました。

次回は6月19日(水)午後1:30~開催します。

この写真の人物は一体誰だ?

石川禎浩京都大学教授が毛沢東イメージの変遷について語る

日中友好協会加古川支部が加古川市内で5月12日に開いた公開特別講演会で、「中国共産党史研究」の第1人者で京都大学人文科学研究所教授の石川禎浩氏が「『赤い星』は如何にして昇ったか」と題し講演しました。

エドガー・スノウ撮影の毛沢東肖像写真が海外へ拡散

アメリカのジャーナリスト、エドガー・スノウ(1905年~1972年)が1936年に撮影した毛沢東の写真が海外へ拡散していく過程でイメージが変遷し、顔写真や似顔絵が変化していく様子や情報の流れを豊富な写真を映しながら解説しました。

日本外務省が1937年発表の毛沢東と称する写真は一体誰だ?

1937年8月発行の日本外務省情報部「支那共産軍を語る」(「官報附録週報」内閣印刷局発行 第44号、1937年8月)に、中華ソビエト人民共和国中央政府主席・毛沢東と中国工農紅軍革命軍事委員会主席・朱徳の顔写真が並んで掲載されている。朱徳の写真は、1922年に上海で写された写真から似顔絵を経て伝わったと推測されるが、毛沢東の写真は明らかに全くの別人であることがわかる。

外務省の毛沢東認識、歴史からどう学ぶか

石川教授は、当時の外務省が本当にこの人物を毛沢東だと思っていたのなら相手の顔も知らずに日中戦争を戦っていたことになる。或は日本国民に『共匪』のマイナスイメージを植え付けるための情報操作・世論誘導だとすればそれは当時の政府の愚民政策だ、と語りました。ではこの人物は一体誰なのか?答えはまだ出ていません。

※石川禎浩先生は、加古川支部の「中国近現代史」研究会にも来られます。日程は6月22日(土)JR加古川駅東すぐのサンライズビル5F。詳しくは090-8753-5972(前田さんへ)


講演会資料の一部は下記からダウンロードできます。(JPEG)

蘇軾の「春夜」を読む

白楽天を敬慕していた蘇軾

蘇軾(1036~1101)は白楽天(772~846)を敬慕していた、彼の号「東坡」は白詩(白楽天の詩)による。白楽天は忠州の刺史(知事)のとき、東の土手に好きな花を植えたことから。4月の「漢詩を読む会」は、丹羽博之大手前大学教授の解説で蘇軾の「春夜」を中心に読みました。(写真上:4月20日の漢詩を読む会)

蘇軾の「春夜」は起句「春宵一刻直千金」が素晴らしい。「春眠不覚暁」「国破山河在」など起句が素晴らしいとその絶句は成功と丹羽教授は語ります。東坡肉(豚の角煮:トンポーロー)は彼の号が由来で、彼が発明した料理とも言われています。

武島羽衣作詞、滝廉太郎作曲「花」の歌詞3番に「錦おりなす長堤に くるればのぼるおぼろ月 げに一刻も千金の・・・」と、日本の歌にも取り入れられています。

「春夜」蘇軾

春宵一刻直千金 花有清香月有陰

歌管楼台声細細 鞦韆院落夜沈沈 (鞦韆はブランコ、管は管楽器)

「春夜」の他に蘇軾の「食猪肉」「三月二十九日」についても丹羽博之先生の解説で読みました。「食猪肉」には、値段は土のように安いのに、金持ちは食いたがらないし、貧乏人は調理法を知らないと。蘇軾が考案したという東坡肉の作り方が書かれていてたいへん興味深い。(猪は豚のこと)

「漢詩を読む会」次回は6月8日(土)午後2時~開催します。