李白に敬慕の情を抱き続けた杜甫
8月8日の「漢詩を読む会」は李白と杜甫をテーマに、丹羽博之大手前大学教授の解説で下記の二首を読みました。
李白(701~762)と杜甫(712~770)が初めて出会ったのは、天宝三(744)年、李白44歳、杜甫33歳の時であった。李白は宮廷から遠ざけられ、杜甫は科挙に落第し二人とも失意の中で東都洛陽で出会い、その後二人は2年余りにわたり放浪の旅に出た。杜甫は先輩詩人李白から大きな影響を受けた。以後、李白との再会はかなわなったが杜甫は一生李白の身を案じ、再会を念じながら李白を思う詩を十五編残している。
この詩は李白46歳の時の作。杜甫と山東省一帯をめぐった後、魯郡の東にあたる石門山で、杜甫と別れる時に作ったもの。
魯郡東石門送杜二甫(魯郡の東石門にて杜二甫を送る)李白
醉別復幾日 醉別復た幾日ぞ
登臨徧池臺 登臨池台に徧(あまね)し
何言石門路 何ぞ言わん石門の路
重有金樽開 重ねて金樽の開くこと有らんと
秋波落泗水 秋波泗水(しすい)に落ち
海色明徂徠 海色徂徠に明かなり
飛蓬各自遠 飛蓬各自に遠し
且盡林中盃 且(しばら)く林中の盃を尽さん
下の詩は杜甫35歳の作。当時、杜甫は長安にあり、ここで先輩詩人の李白に寄せる敬慕の気持ちをうたったものである。
春日憶李白(春日李白を憶う)杜甫
白也詩無敵 白也詩無敵
飄然思不群 飄然として思群せず
淸新庾開府 清新は庾(ゆ)開府
俊逸鮑參軍 俊逸は鮑参軍
渭北春天樹 渭北春天の樹
江東日暮雲 江東日暮の雲
何時一樽酒 何れの時か一樽の酒
重與細論文 重ねて与(とも)に細かに文を論ぜん
次回「漢詩を読む会」は10月10日(土)14:30~開催します。