左遷の境遇を思いやった詩を交わす
元稹(779~831)字は微之、河南(洛陽県)の人。15歳で明経科に及第した俊才。左拾遺となっては鋭い時局批判を行い、河南の尉に左遷され、監察御史となっては宦官の仇士良と喧嘩して顔を傷つけられたうえ、江陵(湖北省)に放逐され、また通州(四川省)に左遷されている。白楽天の失意の境遇を思いやった詩を送っている。
白居易(772~846)字は楽天、下邽(陝西省渭南)の人。29歳の時、最初の受験で進士科に及第、17人の及第者中最年少。32歳で試判抜萃科に及第。及第者8人の中に元稹がおり、共に校書郎を授けられ終生の友情を交わすきっかけとなった。35歳で才識兼茂明於体用科に及第、官吏の道を歩みだす。翰林学士、左拾遺等を歴任し、母の喪に服すため辞職。43歳の時、太子左賛善太夫となり、翌年宰相武元衡の暗殺事件が起きた際、犯人を捕らえるよう上奏し、越権行為で咎められ、江州(江西省九江)司馬に左遷された。元稹と左遷の境遇を思いやった詩を交わしている。
船中讀元九詩 舟中、元九の詩を読む 白居易
把君詩巻燈前讀 君が詩巻を把って灯前に読む
詩盡燈残天未明 詩尽き灯残りて天未だ明けず
眼痛滅燈猶闇坐 眼痛み灯を滅して猶お闇坐す
逆風吹浪打船聲 逆風浪を吹いて船を打つ声
聞樂天授江州司馬 楽天の江州司馬を授けられしを聞く 元稹
残燈無焔影憧憧 残燈焔無く影憧憧
此夕聞君謫九江 此の夕べ君が九江に謫せらるるを聞く
垂死病中驚坐起 垂死の病中驚いて坐起すれば
暗風吹雨入寒窓 暗風雨を吹いて寒窓に入る
※白楽天の詩は日本の平安文学にも大きな影響を与えている。
第13回「漢詩を読む会」は10月13日(土)午後2時~