中老鉄道、開通から4年で旅客6,250万人以上を輸送

中老鉄道、開通から4年で旅客6,250万人以上を輸送
~地域経済に新たな活力を注ぐ「黄金の大動脈」~

12月2日、中老鉄道は開通から4周年を迎えました。この4年間、安全運行を維持しながら、累計で旅客6,250万人以上、貨物7,250万トン以上を輸送。中国とラオスを結ぶ「黄金の大通道」としての効果は年々拡大し、地域の経済・社会発展に新しい活力をもたらしています。

旅客輸送の飛躍
• 開業当初は月60万人だった旅客数が、現在は最高220万人に。
• 中国区間では日平均8本から最大86本へ増便し、累計5,134万人を輸送。
• ラオス区間では日平均4本から最大18本へ増え、累計1,124万人を輸送。
• 昆明~ビエンチャン間の国際列車は4本に拡充、座席数も250から420へ増加。
• 泡水祭や守夏節などラオスの伝統行事に合わせた特別輸送も実施。
• ラオス区間では列車による宅配便サービスも展開し、累計126万件を「当日配達」。

貨物輸送の拡大
• 開業当初は1日2本だった貨物列車が、現在は最大23本に。
• 牽引能力も2,000トンから2,800トンへ強化。
• 累計1,600万トン以上の貨物を輸送し、19か国・地域へ拡大。
• 東南アジアの果物やビールなどが中国・欧州へ最短15日で到着。
• 通関時間は40時間から2~5時間へ短縮。
• 2025年11月までに中アジア向け列車は累計1.2万本以上運行。

経済・観光への波及効果
• 「鉄道+観光」の融合で、120か国以上から64万人が国際列車を利用。
• 沿線の観光地やホテル、飲食業が活性化。
• 昆明~ラオス~タイ間の貨物コストは30~50%削減。
• ラオス国内の輸送コストも20~40%低下。
• 沿線には40以上の産業物流園区が建設され、鉄鋼・ゴム・新エネルギーなどの産業が拡大。

安全と人材育成
• 衛星地図やドローン、検査ロボットなど最新技術を導入。
• 1,400日以上の無事故運行を達成。
• 中国から1,252人の技術者が派遣され、ラオス人1,475人が資格取得。
• 32人のラオス人機関士が独立運転を開始し、鉄道技術者の第一世代が誕生。

今後の展望
国鉄グループは、これまでの成功経験を活かし、ラオス鉄道部門との協力をさらに強化。安全管理やサービス品質を高め、中老鉄道を「一帯一路」や地域経済の発展に貢献する大動脈として、両国の人々にさらなる恩恵をもたらすことを目指しています。

私は“支付宝”、だからマーク・ユンを訴える!

「私は“支付宝”、だからマーク・ユンを訴える!」――ユニークな名前が生んだ裁判劇

インターネット時代、名前ひとつが世間の話題を呼ぶことがあります。中国・山東省臨沂市に住む61歳の男性は、その名も「支付宝(ジーフーバオ)」――日本語にすると「アリペイ」。この名前がきっかけで、世界的企業家・馬雲(ジャック・マー)との奇妙な縁が生まれました。

名前の由来と時代の変化
男性は1962年生まれ。姓は「支」、名前は「付宝」で、家族の伝統に従い「支付宝」と名付けられました。兄は「支付发」、妹は「支付花」と、家族全員が「支付」で始まる名前を持っています。
当時はごく普通の人名でしたが、時代が進み、馬雲が「支付宝(アリペイ)」という決済サービスを世に出すと、瞬く間に中国全土で大人気に。男性の名前は一躍、特別な意味を帯びるようになったのです。

法廷へ――100万元の訴え
2017年、この「支付宝」さんは馬雲とアリババを相手取り、100万元(約1,600万円)の損害賠償を求めて裁判を起こしました。
理由は「自分の名前と同じサービス名が広まり、生活の中でからかわれたり、名前の独自性を失った」と感じたからです。
一方、アリババ側は「サービス名は金融事業の必要から付けたもので、個人を侵害する意図はない」と説明しました。

判決とその後
裁判の結果、男性は敗訴。賠償金は得られませんでした。
しかしその後、アリババは大企業らしい柔軟さを見せます。男性と話し合いを重ね、「支付宝示範店」を共同で設立。サービスの知名度を活かした店舗は繁盛し、男性も次第に裁判のショックから立ち直っていきました。

名前が映す時代の物語
この裁判は一見すると珍妙な出来事ですが、実は「時代の変化が日常に新しい意味を与える」ことを示しています。
普通の人名が、インターネットの波により社会的な象徴へと変わり、そこから新しい物語が生まれる――そんな現象を私たちは目の当たりにしました。
最終的に、男性とアリババの協力関係は「人と企業の共存」を象徴するエピソードとなり、今も人々の語り草になっています。名前は単なる記号にすぎませんが、時代背景によっては思いもよらぬドラマを生み出すのです。

「渡り鳥列車」の旅

🚆 Z384次列車の乗務員は、なぜ3種類の制服を着替えるのか?
11月24日16時53分、682名の乗客を乗せた Z384次列車 が長春駅を出発し、4267キロに及ぶ「渡り鳥の旅」が始まりました。
この列車は、中国鉄路瀋陽局集団公司の管内で唯一の「渡海旅客列車」。11の省市、22の駅を経由し、全行程47時間37分を走破します。

🕊️ 「渡り鳥列車」と呼ばれる理由
冬になると、東北地方の多くの高齢者が海南島へ「避寒」に向かいます。Z384次列車は彼らに親しまれ、「渡り鳥列車」「シルバー列車」と呼ばれています。
長春の雪景色から南国の海辺まで、まるで四季を駆け抜けるような旅。乗務員が途中で 3回制服を着替える のも、この列車ならではの風景です。
• 長春出発時:厚手の防寒コートで厳寒に対応
• 聊城付近:軽快なジャケットに着替え
• 肇慶~海口区間:爽やかな半袖姿で椰子の木と海風に溶け込む

👵👴 高齢者に優しい「適老化」サービス
乗客の6割以上が高齢者。瀋陽局集団公司は列車を全面的に「適老化改造」しました。
• 各車両に「渡り鳥医薬箱」を設置
• 風邪薬、降圧薬、酔い止め、救心丸、血圧計などを常備
• 食堂車には20種類以上の炒め料理
• 土豆牛肉煮、羊雑湯、魚香肉絲、紅焼肉、回鍋肉、水煮肉片、酸菜粉炒肉、トマト卵炒め、青菜炒めなど
• 高齢者向けに「減糖・減塩・低油・低脂」メニューも用

🌊 陸海連運の特別体験
湛江駅を過ぎると、乗務員は「渡海の準備」を開始。安全マニュアルを配布し、救命胴衣の着用方法を丁寧に指導します。
そして琼州海峡に到達すると、列車の車両がそのまま渡船に乗り込みます。乗客は降りる必要がなく、「鉄道—海—鉄道」のシームレスな旅を体験できます。約2時間後、列車は再び編成され、終点の海口へ走り続けます。

💬 乗客の声
• 王さん(男性)
「体が弱く、子どもたちは一人旅を心配していました。でも乗務員が薬の時間まで気にかけてくれて、安心して旅ができました。まるで家にいるようでした。」
• 劉さん(女性)
「初めての“列車で渡海”。最初は不安でしたが、とても安定していて驚きました。救命胴衣の着方も丁寧に教えてもらい、一枚の切符で列車と船を両方楽しめるなんて、帰ったら友達に自慢します!」

🌸 四季を駆け抜ける旅
羽毛服から花柄シャツへ。
雪舞う北国から、椰子の木揺れる南国へ。
この「渡り鳥列車」、あなたも乗ってみたくなりませんか?

6Gの最新動向──中国が国際標準化をリード

2025年11月13日・14日、CCTVの『ニュース連播』や『朝聞天下』などの主要ニュース番組で、中国における6G技術の進展が大きく報道されました。次世代通信インフラとして注目される6G。その最新情報をわかりやすくご紹介します。

🔧 6G技術、第一段階の試験が完了
報道によると、中国はすでに6Gの第一段階技術試験を完了し、300項目以上の重要技術を蓄積しました。今年に入ってからは、以下の5つの技術分野で57件の試験を実施しています:
• 沉浸式通信(没入型通信)
• 無線の知能化
• その他3分野(詳細は未公表)
現在、6Gは国際標準の策定段階に入り、2030年前後の商用化が見込まれています。

🌐 6Gとは?──未来の情報インフラ
6Gは、今後10年で最も重要な次世代のデジタル情報ネットワーク基盤とされ、以下のような特徴を持ちます:
• 通信・センシング・計算・AIの融合
• 対象は「人・モノ・機械」から「知能体」へ拡大
• 地上から空・宇宙までをカバーする通信空間
• 「万物がつながる」「デジタルツイン」の実現を目指す

📘 国際的な影響力も拡大中
中国の6G推進グループは、これまでに80本以上の白書や研究報告を発表。中国が提案した5つの代表的な6G利用シナリオと14の主要能力指標は、すべて国際電気通信連合(ITU)に採用されました。これにより、中国は6G開発において世界の最前線に立っています。

📡 中国移動(チャイナモバイル)の取り組み
中国移動は、6G国際標準の立ち上げ件数で世界の通信事業者の中でトップ。主な実績は以下の通りです:
• 世界初の6Gアーキテクチャ検証衛星を打ち上げ
• 3GPPにおける6G標準プロジェクトの主導
• 6G関連特許を1200件以上申請
• 通信・センシング・計算・AIを統合した試験装置を構築
• 次世代モバイルネットワークの共同実験プラットフォームを整備

🔭 今後の展望
今後も中国移動は、全国各地で6Gのオープン実験施設を拡充し、より多様なシナリオや技術分野での検証を進める予定です。国有企業としての責任を果たしながら、「万物がつながる」「デジタルツイン社会」の実現に向けて、6Gのビジョンを着実に推進していくとしています。

📌 出典:中国移動(China Mobile)

高鉄で運ばれる“旅客”とは?生鮮食品が専用座席で全国へ!

2025年11月4日午前8時41分、G1525号高速鉄道が武漢駅を出発し、貴陽北駅へ向かいました。この列車には通常の乗客に加え、「もうひとつの旅客」が乗っていました。それは、三文魚(サーモン)、羊肉、牛乳などの生鮮食品や特産品、生活用品を詰めた“双11(ダブルイレブン)”の宅配便です。総重量はなんと500キロ以上!

🐟 生鮮食品が高鉄でスピード配送
毎朝、湖北省孝感市で水揚げされた新鮮なサーモンが冷蔵パックに詰められ、武漢駅へと運ばれます。そこから高速鉄道「復興号」に乗って、北京・上海・広州などの都市へ向かい、消費者の食卓に届けられます。
このように、内陸で養殖された水産物が高鉄によって当日中に全国へ配送される仕組みが整い、より多くの人が高品質な海産物を楽しめるようになりました。10月以降、毎日平均1200キロのサーモンが武漢から全国へ高鉄で運ばれているそうです。

📦 鮮度を守る工夫と専用ルート
中国鉄路武漢局グループと中鉄快運武漢支社は、真空冷蔵パックや保冷箱、断熱容器などの専用設備を活用し、長距離輸送でも鮮度を保つ工夫をしています。
さらに、武漢の主要駅では生鮮品専用の「グリーン通路」が設けられ、荷物は直接保安検査口へ運ばれ、30分以内に列車へ積み込まれるという効率的な流れが確立されています。
輸送中は温度管理も徹底されており、出荷から到着まで冷蔵状態が保たれる「コールドチェーン」が途切れることなく維持されているため、販売業者も消費者も安心です。

📈 “双11”の宅配ラッシュにも対応
11月1日から始まった“双11”のネット通販ピークに合わせて、高鉄による宅配サービスが本格始動。毎日160本以上の高速鉄道が、乗客用車両の空きスペースや専用の宅配ボックスを活用して、武漢から全国各地へ荷物を運んでいます。
さらに、宅配専用車両を備えた列車も毎日6本運行されており、昨年比で輸送能力は約10%増加。鉄道部門は、安全性・効率性・スピードを活かし、需要に応じた柔軟な運行体制を整えています。

💬 商店の声:「まるで移動する冷蔵庫」
「今年初めて高鉄宅配を利用しましたが、スピードも温度管理も素晴らしく、まるで海鮮専用の移動冷蔵庫のようです。注文もたくさん入り、高品質な海鮮を事前に準備して発送しています」と語るのは、商店を営む林さん。

📮 ちょっとしたお知らせ
あなたの荷物も、今まさに高速鉄道に乗って、あなたの元へ向かっています。どうぞ、受け取りの準備をお忘れなく!

第8回中国国際輸入博覧会が開幕

CR450高速鉄道技術革新プロジェクト、第8回中国国際輸入博覧会で注目の的に
2025年11月5日、上海国家会展中心にて第8回中国国際輸入博覧会が開幕しました。会場では、中国高速鉄道の最新技術成果を紹介する「CR450科技创新工程(技術革新プロジェクト)」が華々しく登場。革新的な展示手法と没入型の体験を通じて、多くの来場者の関心を集め、今回の博覧会の目玉となりました。

国家プロジェクトとしてのCR450の歩み
CR450技術革新プロジェクトは、習近平国家主席による「高速鉄道の自主技術革新」に関する重要指示を受け、国鉄グループが主導し、国内の研究機関・大学・企業が連携して推進している国家「第14次五カ年計画」の重点研究プロジェクトです。
2021年に始動し、時速400kmのCR450型車両の開発と、それに対応する鉄道インフラ技術の研究を中心に進められてきました。これまでに、永久磁石式駆動システム、振動・騒音低減、空気抵抗・エネルギー消費の抑制、制動制御、軽量化など、数々の重要技術を克服。基礎理論から安全性、装備開発に至るまで、多くの成果を挙げています。
2024年12月29日には北京でCR450の試作車が発表され、運行速度、エネルギー効率、車内騒音、制動距離などの主要指標で世界トップレベルを達成。すでに複数の高速鉄道路線(渝黔、武宜、沈白、沪渝蓉)で試験運用が行われ、単列で時速453km、交差時には896kmという新記録を樹立しました。これは、世界初となる時速400km級車両の設計体系と開発手法の確立を意味し、中国の高速鉄道が世界をリードする地位をさらに強化したことを示しています。

展示ブースの見どころ
CR450の展示は、中国館の「総合国力の向上」セクションに設置され、CR450車両の塗装を模した箱型ブースが目を引きます。内部にはCR450AF・CR450BFの模型が並び、背面には大型の湾曲スクリーンを設置。来場者はタッチパネルで操作し、CR450の3D映像を鑑賞したり、試験走行や運転席・車内のVR体験を楽しむことができます。
特に注目は、以下の3つの体験コンテンツです:
• 🎥 没入型映像:CR450の基礎研究から設計、技術開発、試験評価までの道のりを迫力ある映像で紹介。
• 🚄 試験走行シミュレーション:運転士の視点で、CR450が高速で走行・交差する様子をリアルに再現。
• 🕶️ VR全景ツアー:車両内部を仮想空間で歩き回り、次世代高速鉄道の技術と人間中心の設計を体感。

今後の展望
CR450プロジェクトの進博会での公開は、世界に向けて中国の技術力と開放性を示す重要な機会となりました。国鉄グループは今後も研究開発を継続し、2026年にはCR450車両を成渝中線でより実用に近い条件下での全面試験を予定。早期の商業運行を目指し、より快適で便利な鉄道旅行の実現に貢献していく方針です。

超長編成の貨物列車が再び登場!その迫力に圧倒される

一度見たら忘れられない――まるで鉄の巨龍が大地を駆け抜けるような映像が話題です。今回ご紹介するのは、中国の瓦日(がじつ)鉄道を走る「万吨重载列车(1万トン級の超重量貨物列車)」です。

どれだけ長い?車両数はなんと106両!
この列車は全長1600メートル。中国の高速鉄道「復興号」の標準編成の約8倍にもなります。積載量は約1.2万トン。まさに“動く鉱山”とも言える規模です。

瓦日鉄道とは?
瓦日鉄道は、山西省興県瓦塘鎮から山東省日照港までを結ぶ、全長1260キロの重要な石炭輸送ルート。山西・河南・山東の3省を横断し、中国のエネルギー供給を支える大動脈です。

列車の点検拠点「長子南駅」
この超長編成列車が停車・点検されるのが、山西省南東部にある「長子南駅」。中国鉄道鄭州局の管轄で、瓦日鉄道唯一の列車検査場です。駅構内の長さは3881メートル、線路は19本あり、最長のものは2030メートルにも及びます。
ここでは毎日約250本の貨物列車が発着し、平均して6分に1本のペース。中でも1万トン級の列車は、1日6〜8本が運行されています。

急勾配でも安全に走るための工夫
瓦日鉄道は山岳地帯を通るため、勾配やカーブが多く、運転には高度な技術が求められます。そこで使われるのが「双機重連」方式。2台の和諧D1型電気機関車が連携して牽引することで、十分なパワーを確保しています。
特に長子南〜湯陰東の区間は長い下り坂が続くため、運転士は2台の機関車を同時に操作。制動時の圧力誤差は1キロパスカル以内、操作レバーのズレは0.2ミリ以内という厳しい精度が求められます。
この難所を安全に通過するため、鉄道機関部門では「停車充風再起動」という独自の操作法を確立。過去の運行データをもとに試行錯誤を重ねた成果です。

巡回検査もロボットで効率化
列車が長子南駅に到着すると、制動機の性能を確認する「試風試験」が行われます。従来は検査員が2000メートルの線路を徒歩で確認し、20分以上かかっていました。
しかし2024年からは「車底スマート巡検ロボット」が導入され、検査時間は最大10分に短縮。2025年には障害物除去機能も追加され、巡回中に砕石などを自動で排除しながらデータを報告できるようになりました。

“背負う検査員”が守る安全
列車の最後尾には「列尾装置」と呼ばれる重要な機器が設置されており、運転士が列車の状態をリアルタイムで把握するために使われます。
この装置の取り付け・取り外し・点検を担うのが、長子南駅の「列尾作業班」。装置は1台10キロ以上あり、作業員は最大3台を背負って複数の線路を移動します。その姿から「背包哥(リュック兄さん)」と呼ばれることも。
繁忙期には、わずか10分で装置の交換作業を完了させる必要があり、列車の安全運行を支える縁の下の力持ちです。

寒さが増す季節、瓦日鉄道を駆ける鉄の巨龍は、石炭という“黒い金”を満載し、全国の家庭にぬくもりを届けています。


出典:人民鉄道報業有限公司 河南記者ステーション(鄭州局グループ融媒体センター)
文・写真:張佳媛、王玮、王钦弘、劉穎、翟斌、孟帥、蘇冠華、路莉、袁修航、于盛龍
動画:王玮
編集:齊美華
校正:李孝佺

全国鉄道で電子発票を全面導入!

100年以上にわたり使われてきた紙の鉄道切符に別れを告げ、鉄道のデジタル化が新たな段階へと進みました。2025年10月1日、新中国成立76周年の記念日にあたるこの日から、全国の鉄道旅客輸送において電子発票(電子領収書)が全面的に導入されました。

紙から指先へ——切符の進化が時代を映す
新中国成立当初は、硬い厚紙に手書きで乗車情報が記された切符(硬券)が使われていました。1979年には北京駅で初のコンピューター発行によるソフト紙切符(軟券)が登場。1997年には全国で統一様式のソフト紙切符が普及し、2007年には磁気式の「小さな青い切符」が試験導入され、高速鉄道時代の幕開けを迎えました。
2020年には全国で電子切符が導入され、身分証ひとつで乗車できる「一証通行」が現実のものとなりました。そして今、電子発票の全面導入により、領収書の取得や経費精算がワンタッチで可能になりました。
「窓口での購入、電話予約、券売機での発券……すべて経験しましたが、今では領収書も電子化され、何度でもダウンロード・印刷できるようになりました」と語るのは、青島への高鉄旅行を予定している肖さん。鉄道利用の利便性は年々向上しています。

利便性の向上は、販売方式の進化から
インターネット販売システム「12306」が登場して以来、登録ユーザーは8億人を超え、現在では約85%の切符がオンラインで販売されています。
切符の形の変化は、鉄道業界の進化を記録するだけでなく、国家の発展と時代の進歩を映す鏡でもあります。
1999年、初の「国慶節ゴールデンウィーク」では、鉄道の一日あたりの旅客数は400万人未満でした。当時の切符購入は、混雑・騒音・長時間待ちが当たり前でした。
2013年10月1日には、旅客数が初めて1000万人を突破。2か月後には「12306」スマートフォンアプリが登場し、指先ひとつで切符が買えるようになりました。
2023年9月29日には、1日で2000万人以上が鉄道を利用。「加長版ゴールデンウィーク」と呼ばれたこの期間、12306の一日あたりのアクセス数は500億回に達しました。

サービスの進化が旅をもっと快適に
モバイル決済、キャンセル待ち予約、座席指定、インターネット注文の食事、学生証のオンライン認証、高齢者向けの改良やバリアフリー対応など、サービスは次々と進化し、利用者から高い評価を得ています。
2025年10月1日以降、電子発票が全面導入される一方で、鉄道部門は紙の行程案内や、オフラインでの電子発票申請窓口、代理購入者向けの発行サービスも継続。高齢者やインターネット利用が難しい方々にも配慮されています。
「切符は鉄道職員から旅客への“招待状”です。形が変わっても、目的は旅をより便利にすることです」と語るのは、中国鉄道科学研究院の首席研究員であり、12306科創センター副主任の単杏花氏。鉄道のデジタル化・スマート化を進める中で、12306の機能をさらに充実させ、より快適で効率的なサービスを提供していくと述べています。

世界初の砂漠鉄道環状線を訪ねて

和田〜ウルムチ間を結ぶ「バザール列車」の旅
「焼き包子(パオズ)が焼き上がりましたよ!」
和田発ウルムチ行きの5818次列車の車内に、威勢のいい掛け声が響くと、乗客たちが一斉に集まり、誰かが新疆舞踊を踊り始めました。車内は一気に活気づき、まるで移動する市場「バザール」が始まったかのようです。

熱々の包子は、香ばしい匂いとともに次々と売れていきます。商人の柔則・艾力さんは、わずか20分で80個を完売し、400元以上の売上を得ました。

「桃はまず味見してから買ってください。甘くなければお代はいただきません!」
農家のヌルママティさんは、朝に収穫したばかりの桃を背負って列車に乗り込み、乗客に試食を勧めます。「自分の畑で育てたものだから、売れた分がそのまま収入になります。和田の果物は本当に甘いですよ」と笑顔で語ります。

この列車は、和田〜ウルムチ間を走る5818、5815/5816、5817次列車で、全長1706km。和若鉄道、格庫鉄道、南疆鉄道をつなぎ、14駅を経由する世界初の砂漠鉄道環状線です。月に2回、車内で「バザール(ウイグル語で市場)」が開かれ、沿線の住民が農産物や特産品を持ち込み販売する、まさに「地方創生列車」と呼ぶにふさわしい取り組みです。

7号車には、胸に党員バッジをつけたウイグル族の老党員、サイディ・トゥルディさんの姿がありました。74歳の彼は、38年の党歴を持ち、娘に会うためにこの列車でチェモへ向かっています。「入党した頃は、ただ『共産党について行けば食べていける』という思いでした」と目を輝かせながら語ります。

「若い頃は、和田からウルムチまで行くのにロバに乗るか徒歩で、3〜4か月かかっていました。今はこの列車で22時間です」とトゥルディさん。鉄道開通前は、北疆へ行ったことがない人も多く、列車の登場は人々の生活に大きな変化をもたらしました。

和田の人々の暮らしも大きく変わりました。泥道は舗装され、平屋はマンションに、小型車を持つ家庭も増えました。「共産党がなければ、今の幸せはなかった」とトゥルディさんは語ります。

列車はタクラマカン砂漠の南縁を走り、車窓からは果てしない砂の海が広がります。貴州省から観光に訪れた70歳の陳新萍さん夫妻は、「私たち、新疆と同い年なんです!」と笑顔で話します。彼女は車窓を指さし、「見て、線路の両側にある草方格は、砂を固定するためのものよ」と説明。和若鉄道は、計画段階から風砂との戦いを続け、5000万㎡の草方格を設置し、1300万本以上の植物を植え、11.4万ムーの緑化を実現しました。

「この砂漠の“縁取り”を見るのが、今回の旅の目的のひとつなんです」と陳さんは語ります。

車内では、言葉の通じないウイグル族の乗客に対し、車掌のマミナさんが迅速に対応。彼女は2014年から南疆方面の列車勤務を続け、2022年の和若鉄道開通以来、この「地方創生列車」に乗務しています。

列車は運行開始から3年で、延べ285.6万人の乗客を運びました。南北疆の距離を縮めただけでなく、沿線住民の収入増にも貢献しています。800km超の和若鉄道は、南疆の「特色産業回廊」として、和田のメロン、民豊のナツメ、洛浦の絨毯、于田の砂漠のバラなどを効率的に運び、物流コストを40%削減しました。

列車が陽光を浴びて走る中、音楽大学に合格したばかりの青年・ヤセンジャンさんが、民族楽器サタールを演奏。車内は拍手に包まれます。彼はウルムチから広州へ向かう切符を見せながら、「初めて新疆を出ます。大学生活が楽しみです」と語ります。

「今は民族楽器しか学べていませんが、広州では電子ピアノを学びたいです」と夢を語るヤセンジャンさん。大都市への憧れが、彼の学びの原動力になっています。
新疆の70年の歩みを振り返ると、鉄道がタクラマカン砂漠を囲む環状線を形成し、地域の発展を牽引してきました。かつて「死の海」と呼ばれた砂漠は、今や地方創生の希望に満ちた音色を奏でています。

“月牙泉”の縮小と復活

中国では今年の国慶節(建国記念日)と中秋節が重なり、10月1日から8日までの8連休となりました。連休前には「延べ23億人が移動する」との予測も発表され、中国各地の観光地は大変な賑わいとなったようです。

敦煌鳴沙山

さて、中国国内外の観光客に人気の高い名所のひとつが、甘粛省の敦煌(とんこう)です。敦煌といえば、鳴沙山(めいさざん)、莫高窟(ばっこうくつ)、そして月牙泉(げつがせん)が思い浮かびます。

砂漠に湧く三日月形の泉

党河・月牙泉関係図

月牙泉は、三方を砂丘に囲まれた三日月形の小さな泉で、1000年、あるいは研究者によっては3000年もの間、一度も涸れることなく美しい姿を保ち続けてきたとされる神秘的な存在です。
1987年当時の泉の規模は、面積0.9ヘクタール、水深は最深部で9メートル、平均水深は5メートルでした。しかし、同年頃から水位の低下が目立ち始め、1997年には平均水深2メートル、浅い部分では0.9メートル、面積も0.57ヘクタールまで縮小してしまいました。

敦煌の母なる川「党河」との関係

月牙泉遠景

月牙泉の縮小には、敦煌を潤す「党河(とうが)」の水利用が関係していると考えられています。党河は青海チベット高原の北に連なる礽連(きれん)山脈から流れ出し、敦煌の北にある哈拉諾爾湖(ハラノオル湖)へと注ぐ大河です。
1975年には敦煌市近郊に「党河ダム」が建設され、農業用水、工業用水、生活用水のすべてがこのダムの貯水によってまかなわれるようになりました。しかし、その結果、党河の下流への流れが減少し、地下水脈が断絶。これが月牙泉の水位低下につながったと見られています。

地元の取り組みと復活への道
敦煌市はこの事態に危機感を抱き、市民には節水を呼びかけ、事業者や農家には地下水の汲み上げ制限や計画的な灌漑の実施を促しました。
さらに2011年には、総投資額8100万元(約12億円)をかけた「月牙泉水源回復工事計画」が始動。2017年10月には工事が完了しました。施工現場は月牙泉から約10キロ離れた党河の中にあり、地下に河水を浸透させる「浸透場」を設けることで、地下水量の回復を図りました。
その結果、月牙泉は少しずつ回復し、2025年には水域面積1.83ヘクタール、平均水深3.2メートルまで復活。現在は安定した状態を保っていると報告されています。

先端技術で泉を見守る
月牙泉は高い砂丘に囲まれているため、風や砂の動きが泉に影響を与えます。そこで、砂丘の形成や変化を監視する装置が設置され、先端技術を活用したデータ解析が行われています。これにより、砂丘と泉の関係を記録したデータベースが構築され、月牙泉の保全に役立てられています。