佟岩先生の「日中漢字比べ」

「深」と「濃」は何が違う

秋まさに深し。中国語では「秋意正濃」という・「深」(shen)と「濃」(nong)は、何が違うのだろうか。「深」の右側は、体内から赤ん坊をまさぐりだす様子で、体の奥深いところにあり、いずれ生まれてくる大切な本質を指していた。

「深」は、水の奥底だ。「深海」、「深夜」は海や夜の奥底であり、本質である。「深謀」は奥底にある本質的なことまで周到に考え、「深談」は奥底にある本質まで突っ込んで話すという意味だ。そして、奥底は遠くにあるが、此処とつながっている。此処から徐々に「深」に至ることができる。日本では、秋が最も秋らしく本質を徐々に現していく時間の流れを、「秋が深い」と表現しているのだろう。

一方、「濃」は「水」と「農」からなる。「農」は、粘っこいという意味だ。単なる水ではなく、粘っこくて「濃」いのは、何かの成分が多量に入っているからだ。そこから、匂いや味の度合いが強いことも、「濃」で表すようになった。「濃度」、「濃い茶」(濃茶)、「匂いが濃い(味ル很濃)」などである。中国語の「秋意正濃」は、秋の成分が多量にぎっしり入った空間・情景を指しているのだろう。

秋の奥底にある本質が徐々に現れてくる時間の流れを重視した、日本の「秋の深さ」。秋の要素がぎっしり詰まった目の前の空間に感動する、中国の「秋意正濃」。もしかすると、同じ紅葉を見ても感動のポイントに微妙な違いがあるのかも知れない。(西日本華文教育者協会理事・日中友好新聞11月15日号より

日中近現代史を絵や写真で辿る「ラップナウ・コレクション」展

パネル展示に猛暑の中184人が会場を訪れる

日中平和友好条約締結45周年を記念し、8月9日~13日、神戸市灘区の原田の森ギャラリーで開催された「ラップナウ・コレクション」展は連日の猛暑の中184人が会場を訪れました。米国人コレクターのドナルド・ラップナウ氏からコレクションデータの提供を受けた協会は展示用に厳選し、一点毎に説明を付けたパネルを制作、パネル展は東京に続き神戸は2回目の開催となりました。

ラップナウ氏のコレクションは膨大な数で、提供を受けた資料データーから、日本と中国の近現代史理解に役立つ絵葉書・写真・地図・絵・着物・湯呑・筆入れ・レコードカバー・ポスター・旗・引札・パンフレット・冊子・ガムのおまけカードなど154点を選び「台湾植民地化」「義和団事件」「日露戦争風刺画」「辛亥革命」「中華民国の成立」「抗日運動の始まり」「全面戦争への展開」「傀儡政権」「アジア太平洋戦争における宣伝戦」など29テーマに分類、解説を付けて作成したパネルに年表、中国地図を加えた31枚と、コレクター・ラップナウ氏のあいさつ文、主催者あいさつを会場に展示しました。参観者51人から感想文が寄せられました。

「パネル提示のみであるのに拘わらず内容が充実、本当に伝達したいものがほとんどで、見ていて疲れずに済みました。世界が正に今、戦禍の様相を呈しています、次回を期待します」「江戸時代~昭和と長い膨大な資料であり、拝見するのが大変でした、特に文字情報が多い」「まとまって見る機会の少ない展示でよかった、最初に年代順の表があり理解しやすかった」(アンケートの一部より)

「ラップナウ・コレクション展」始まる!

絵葉書でめぐる近代史―日本と中国の近代を知る!

日時:8月9日(水)~13日(日)10:00~18:00(最終日15:00)

会場:兵庫県立原田の森ギャラリー東館2F

JR灘駅北へ10分/阪急王子公園駅西口西へ6分

入場無料

「ラップナウ・コレクション展」が8月9日(水)から始まりました。絵葉書や写真などを通して日本と中国の近代史が理解されることを期待します。歴史的に極めて貴重な絵葉書などに説明を付して分野別にまとめたパネルの展示は神戸初公開となります。猛暑の中ですがお誘い合わせてご参観下さい。1900年代初頭に日本で作られた台湾地図の絵葉書について書いたポール・バークレーの論評の一部を紹介します。

植民地台湾を映す日本の絵葉書

1900年から1945年にかけての期間に数千種類に及ぶ様々な絵柄の「台湾」絵葉書が発行された。植民地台湾を映し出す日本絵葉書に関しては、最大級のコレクションが個人の蒐集家のもとにある。ドナルド・ラップナウ氏が素晴らしいコレクションを収蔵している他、魏徳文氏、張良澤氏、荘永明氏らも見事なコレクションを所有している。

(右の絵葉書地図)、初期の絵葉書は1905年頃に東京で刊行されたもので、人種的に二分された台湾を描いている。島の西側は「漢人種」、中央から東部は「生蕃人種」と記されている。左上の写真は両人種の代表的な姿を示すものである。ここにある「生蕃人種」はやがて「台湾原住民」という言葉に置き換えられるようになった。地図の、白く塗られた彼らの居住域はさらに民族で区分され、アタイヤル、サイセット、ブォヌム、ツォオ、アミス、ツァリセン、プユマ、ヤアミ、パイワンと表記されている。

この民族分類法は日本の植民地時代の独創的な分類であり、台湾人類学および台湾研究の草分けである伊能嘉矩(1867~1925)によって考案されたものである。絵葉書はまた、台湾島の人口を次のように記している。―内地人(日本人)53,365、本島人(漢人)2,915,984、生蕃人104,334、外国人6,009。居住者の圧倒的多数は漢人であるが、この地図は彼らを河洛系と客家系に分けて記していない(多くの日本地図においては分けられている)。むしろ先住民の「生蕃人」を細分することに焦点を当てている。

実際、日本の「台湾」絵葉書においては、先住民が過剰とも言えるほど台湾を代表している。絵葉書に記された数字によると、台湾の1,056方里が「普通行政区」(漢人居住域)にあるのに対し、1,276方里は依然「生蕃界内」である。この地図は、台湾のまだ統治されていない領域を際立たせ、民族的多様性を持っている多数派の漢人の存在を最小限にとどめている。(下の画像は展示パネルの一枚で、この中に台湾地図が紹介されています)

中国の記者試験制度とは

どうなる「報道の自由」―新聞記者職業資格試験

社会主義の下で、「言論・表現の自由」はどうなっていくのだろうか?そして「報道の自由」は?中国政府は今年初め、7月から中国本土のメディアで働く記者の資格試験制度を導入する、と発表した。香港、台湾、マカオと海外メディアの記者は対象外とされているが、メディアを管轄する国家新聞出版署が実施する「新聞記者職業資格試験」で、国内の取材・編集活動に必要な「新聞記者証」を今夏以降は全国統一試験に合格した人にだけ交付。5年ごとに更新が必要になる、という。

国内の報道だから新しいことはなく問題はないと思いがちだが、国内の情報が出てきにくくなるとすれば、他人事ではない。まして、習総書記は報道・世論工作チーム建設を重視しているといい、「新時代の中国の特色ある社会主義思想」を実行し、中国共産党の宣伝と意識形成を着実に進める狙い、というから「言論統制の強化」が心配だ。

中国メディア、つまり「新聞工作者」の任務は、政府の決定をいち早く知らせ、全国にこれを徹底させることと、世の中に起きている事実を知らせ、党や政府が間違った決定をしないようにすることだとされてきた。しかし、「国境なき記者団」による「報道の自由度ランキング」では、中国はワースト2位の179位(日本は68位)。少なくとも報道の自由については問題がありそうだ。(丸山重威・ジャーナリズム研究者、日中友好新聞「中国レーダーより抜粋)

ラップナウ・コレクション展開催迫る!

日中が争うことなく歴史的な理解を深める機会に

ラップナウ・コレクションとは」

日本と中国を中心にアジアに関する絵葉書をはじめ、ポスターやビラ、古写真、地図、浮世絵、双六、楽譜、着物、マッチや証票のラベル、おまけカード、看板など、19世紀末から20世紀半ば頃までの多種多様な品々五万点以上を、個人コレクターの米国人ドナルド・ラップナウ氏が長年かけて収集した大へん貴重なコレクションです。

「消費され捨てられてしまう短命なメディア」

近代において製作されてきた図像や表象、宣伝、プロパガンダを含むビラやポスターなどのエフェメラ・メディア、日常で身近に親しまれながらも、消費され捨てられてしまう短命なメディアは興味深く、このようなコレクションの一端を紹介する展示会は極めて貴重です。

「日中の歴史的な理解を深める機会に」

今回のラップナウ・コレクション展は、近代の日本と中国に関するコレクションから厳選した資料展示で、アジアの中で日本と中国が織りなしてきた近代史の様々な側面を浮かびあがらせます。展示を通して、教科書や歴史書とは異なった大衆的なイメージという視点から、近代における日中関係を振り返り、日中が二度と戦うことのないよう「平和と友好」を深め、日本と中国の近代を知る機会として頂ければ幸いです。

「ラップナウ・コレクション展」

日程:2023年8月9日(水)~13日(日)10時~18時

(最終日は15時まで)

会場:兵庫県立「原田の森ギャラリー」東館2階

(JR灘駅北へ5分/阪急王子公園駅西へ3分)

入場無料

主催:日本中国友好協会兵庫県連合会

Tel&Fax:078-412-2228

後援:神戸市・神戸市教育委員会

3期目に入った習近平体制と台湾有事

協会の井上会長が現在の情勢と友好運動を語る

1978年から2011年までの中国の平均経済成長率は9・7%でした。これは60年代の日本の高度経済成長を30年以上続けたことに匹敵します。これが可能になったのは、中国を取り巻く国際環境が比較的平和であったこと、先進諸国の技術や経験から学べるという後発の利点を指摘できます。また、中国の政治は確かに強権的ですが、社会は基本的に安定し、質の高い安価な労働力が豊富に存在していました。経済成長期の日本と類似しています。

10年代になり、高成長から中成長へと状況が変化してきました。国内の社会的格差の拡大、少子高齢化の進行などの難題ととに、対外的にアメリカとの対立が浮上してきたわけです。昨年10月の中国共産党20回大会で、習近平が3期目の総書記となり、今年3月の全人代で国家主席に就任しました。習体制は、新型コロナによるマイナスからの回復という喫緊の問題とともに、量から質へ経済成長の転換をはかりながら、社会の安定と秩序をいかに維持するかなど、多くの国内課題を抱えています。

習体制の下、政府に対する党の指導的立場の強化が進むと見られます。党の最高指導部を習近平と関係が強い人物でかためたことで、敏速な決定がしやすくなる反面、国民の多様な意見を政策にいかに反映できるか注目すべきでしょう。また国民の人権や言論の自由が拡大するかどうか、見守っていく必要があります。

昨年8月、ペロシ米下院議長が台湾を訪問したのに対し、中国は、「一つの中国」原則が「中国の核心的利益の中の核心」であるとして、台湾海峡周辺で大規模な軍事演習を実施しました。日本では、「台湾有事は日本有事」とか「ウクライナは明日の東アジア」などという危機を煽る物騒な表現が飛び交っています。安保関連3文書は、こうした文脈の中で強引に閣議決定されたわけです。

しかし、習新体制でも中国の立場はこれまでと変わらず、台湾の平和的統一をめざすということです。また、台湾の民意は、ペロシ訪台後の世論調査でも、86.3%が基本的に現状維持です。台湾が独立を宣言するようなことは、冷静に考えれば、まず考えられない想定なのです。危機を煽り、中国を念頭に大軍拡に走るのは、日本にとって愚策としか言いようがありません。(日中友好新聞5月1日号より、後半は「友好交流活動」のページで紹介します)

中国遼寧省の大連湾海底トンネル開通

7年の工期を経て5月1日正式開通

遼寧省大連では、建設に7年を要した大連湾海底トンネルと光明路延長プロジェクトが5月1日正式に開通しました。プロジェクトの幹線の全長は12.1kmで、海底トンネル・山岳トンネル・水中インターチェンジ・陸路インターチェンジが含まれます。

その中で、北の大連のバラクーダ湾エリアから南の大連東港ビジネス地区まで走る5.1kmの海底トンネルは、中国北部で最初の大規模な海を越えた浸漬トンネルであり、中国で最小の曲線半径と最大の曲率を持つ湾曲した浸漬トンネルでもあります。開通後、大連湾の北岸と南岸から車で<>分もかからず、大連湾の交通圧力を緩和し、大連湾の両側の統合建設を促進し、渤海と黄海周辺の沿岸経済圏を構築するために非常に重要です。と紹介されています。(CCTVニュースより)

中国の積極的外交に注目!

日中友好新聞東神戸版に掲載された投稿記事

3月の「全人代」を終え3期目に入った中国の習近平国家主席は、ウクライナ侵攻を続けるロシアを訪問しプーチン大統領と会談、停戦に向けての提案を行ったと伝えられました。欧米諸国がウクライナ支援を続ける中、中国が中立的立場で停戦へのイニシアティブを発揮できるかが注目されるところです。

2016年以来、外交関係を断絶していたサウジアラビアとイランが3月10日、国交正常化協定に調印したが、その仲介をしたのが中国です。今年2月、イランのライシ大統領の中国訪問などを経て実現したものです。

4月5日から7日の日程で、フランスのマクロン大統領が国賓として訪中し、閲兵式や公式会談、晩餐会など盛大な歓迎を受けました。講演でマクロン大統領は「習近平氏が提案しているウクライナ戦争に関する政治的、外交的解決案である和平案を歓迎する。フランスは和平案全体に同意するわけではないが、和平案は紛争の解決に寄与する」という趣旨のことを述べました。これに対する内外からの批判には「フランスはアメリカの下僕ではない」とも語っています。

習近平氏は4月14日、国賓として中国を訪問したブラジルのルラ大統領と北京の人民大会堂で会談しました。習近平氏はルラ大統領の訪中に熱烈な歓迎の意を示し、「中国とブラジルはそれぞれ東半球、西半球の最大の発展途上国であり、重要な新興市場国だ。互いを全面的戦略パートナーとして、幅広く利益を共にしている。新時代の両国関係の新たな未来を開き、両国人民により多くの幸福をもたらし、世界の平和・安定と繁栄・発展のために積極的で重要な役割を果たしていきたい」と述べています。

今年、日本はG7議長国として大きな役割を担っています。5月19日から広島サミットが開かれます。岸田首相には世界の平和・繁栄に貢献できる役割を果たしてもらいたいものです。(H・H、日中友好新聞東神戸支部版5月号より)

黄砂発生!農業や生活環境に重大な影響

黄砂は中国大陸内陸部のタクラマカン砂漠、ゴビ砂漠、黄土高原など、乾燥・半乾燥地域で、風により数千メートルの高度まで巻き上げられた土壌・鉱物粒子が偏西風に乗って日本に飛来し、大気中に浮遊あるいは降下する現象です。風により大気中に舞い上げられた黄砂は、発生源地域周辺の農業生産や生活環境にしばしば重大な被害を与えるばかりでなく、大気中に浮遊し、黄砂粒子を核とした雲の発生・降水過程を通して地球全体の気候に影響を及ぼしています。(環境省HPより)

この時期、柳絮(柳やポプラの綿毛)飛散も加わり特に北京や上海、杭州などの大都市で生活する中国国民にとっては大変厳しい環境となっています。中国のネットニュースからその一部画像を紹介します。(写真上は北京南駅、下は北京市内の様子、黄砂発生・飛来図は環境省HPより、写真下3枚は柳絮飛散・百度中国より)

中露が経済協力中心に共同声明

「冷戦脱却、対話を」中国の立ち位置

習近平主席が3月21日、ロシアを訪問、プーチン大統領と会談した。経済協力を中心に共同声明を出した。はっきりした「和平」のプロセスは見えなかったが、訪問前に発表した「ウクライナ危機の政治的解決に関する中国の立場」は、中国外交の現在を正面から明らかにしたものだった。

岸田首相は、習近平主席訪ロに合わせるように、ウクライナを訪問。「米国としては日本を中国のライバルとして外交戦をさせるために、習近平の訪ロと重なる日程で岸田をウクライナに行かせた観がある」(田中宇「国際ニュース解説3月23日版」)との見方もあるほど。日本外交の主体性が改めて問われていると言えそうだ。

ポジションペーパーでは、①各国の主権尊重②冷戦思考の排除③停戦・戦闘の終了④和平対話の始動⑤人道危機の解決⑥民間人と捕虜の保護⑦原子力発電所の安全確保⑧戦力的リスクの減少⑨食糧の国外輸送の保障⑩一方的制裁の停止⑪産業チェーン・サプライチェーンの安定確保⑫戦後復興―をあげている。「停戦・戦闘の終了」「和平対話の始動」では、「可能な限り早期に直接対話を再開」させ「国際社会」に、交渉再開の「プラットフォームの提供」を求め、中国は「建設的な役割」を果たすとしている。

しかし、例えば米国は「ロシアが報復を開始する前に再編成する方法を提供するだけ」と冷ややかで「ウクライナ支援」名目の戦争参加を続ける構えだ。ロシアのウクライナ侵略に何の正当性もないことが確かにしてもこれが即「ウクライナ軍事支援」であってはならないのは当然だ。

日本国憲法9条は、「戦争」と「武力による威嚇」「武力の行使」を「永久に放棄」し、「前文」は「全世界の国民」に「平和的生存権」を認めている。日本外交はその線に沿って展開されなければならない。しかし、米国と共同歩調の岸田内閣は、その逆で、昨年来、日米印豪の「クワッド」首脳会議、オーストラリアとの共同宣言、NATO首脳会議への出席などを通じて「対中包囲網」の強化、拡大に努めてきた。発想はまさに「米国・NATO VS ロシア」の「冷戦思考」そのもので、世界平和には背を向けている。(丸山重威・ジャーナリズム研究者、日中友好新聞4月15日号「中国レーダー」より、写真はCRI)