中国残留帰国者問題の残された課題

中国残留邦人帰国者2世問題とは何か?

中国残留邦人帰国者1世に対しては、日本政府は、全国各地での国賠訴訟の提起を受けて、2008年に「中国残留邦人等の円滑な帰国の促進並びに永住帰国した中国残留邦人等及び特定配偶者の自立の支援に関する法律」(現在の名称、以下「新支援法」と言う)を改正し、生活保護に替わる制度として、生活支援給付金と老齢年金の満額支給(月6万6000円)等の支援を行っています。また、2014年からは、新支援法を改正して、1世と死別した配偶者について老齢基礎年金の2/3相当額の配偶者支援金(月約4万4000円)の支給という支援も行っています。

その一方で、2世に対しては、ほとんど支援がなく、特に2世の中でも多くを占める私費帰国の2世については、そもそも新支援法・施行規則上の「家族等」の定義(永住帰国時の同行する配偶者や原則として20歳未満かつ未婚の実子)から除外されてしまっています。そのために、2世の多くは、日本語がままならず、安定した仕事に就けず、決して少なくない2世が、高齢化した現在、年金も無支給又は低額しか受給できず、生活保護に頼らざるを得ないという支援法改正前の1世同様に苛酷な状況に置かれています。これが、今なお残されている中国残留邦人帰国者2世の問題です。

この問題に対し、日本政府は、戦後生まれの2世については「今次の大戦に起因して生じた混乱等により本邦に引き揚げることができず引き続き本邦以外の地域に居住することを余儀なくされた」(支援法1条)という特別な事情がないなどとして、2世への老後の支援等を拒絶してきました。しかしながら、そもそも、2世の多くは、日本政府の戦後の1世に対する帰国支援の欠如、帰国妨害の結果1世の帰国が30年~50年遅れ、その遅れがそのまま2世に影響し、30歳~50歳になってからの帰国を余儀なくされたものです。

また、日本政府が、家族の繋がりを無視して、1世と国費同伴帰国できる2世を、原則として20歳未満かつ未婚に制限した結果、2世の帰国は余計に遅れてしまったものであり、この政策も誤りであったといえます。その結果、2世は、1世の配偶者と同様に、1世と「長年にわたり労苦を共にし」(新支援法1条)、1世を支えるために永住帰国した経緯があり、かつ、日本語が不自由で、老後の蓄えもない状況が2世にもあり、「自立支援を行う」必要がある(同法1条)にもかかわらず、苛酷な状況に陥ってしまっているのです。このように、2世の現状は、戦後の日本政府の誤った政策が招いた結果といえるのあって、日本政府の責任において改善すべきものと言えます。(浅野愼一摂南大学特任教授、中国「残留日本人孤児」を支援する兵庫の会世話人代表、写真上は本山教室で日本語を学ぶ帰国者2世)

10万筆を目標に取り組んでいる帰国者2世支援署名は現在全国で6万1117筆集り、来年の通常国会(2024年6月開会予定)に向け10万達成をめざし続けています、何卒ご協力をお願い申し上げます。

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