佟岩先生の日中漢字比べ

「脱税」と「漏税」と「逃税」と「偸税」

日本には「脱税」があるが、中国にはない。その代り中国には「漏税」と「逃税」と「偸税」がある。「脱」は「月(肉)」と「兌」からなる。「兌」は「八(分散)」と「兄」(祈る)」からなり、祈りによって悪いものが抜け落ちて嬉しいという意味だ。

「脱」は肉が抜け落ちて痩せることで、衣服を脱ぐことに転じ、抜け出すという意味も派生した。「脱貧致富(貧困を抜け出て豊かになる)」、「病人脱険(病人が危険な状態を抜け出す)」などだ。日本語の「脱税」には、税金は本来イヤなもので、抜け出したいというニュアンスを感じる。一方、「漏」は水が漏れることを指す。「漏税」は不注意による税の申告漏れだ。

また「逃」の右側の「兆」は占い用の亀の甲の割れ目で、「逃」は亀裂が四方八方に向かって走ることから、逃げるという意味になった。「逃税」は、合法的な「節税」、または法律の想定外の方法による「租税回避」だ。そして「偸」の右側は「兪」で、抜き取るという意味だ。「偸」は盗人で、「偸税」は税金を不法に逃れようとする行為である。

こうして見ると、中国語の「漏税」「逃税」「偸税」には、税金は本来納めるべきもので、不法な「偸税」は泥棒も同然という国側の論理が色濃く出ているように感じる。(日中友好新聞2021年3月15号より、講師:佟岩先生 西日本華文教育者協会理事、カットは百度百科より)

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