北宋の司馬光「初夏」を読む

司馬光(1019年~86)の名は、「資治通鑑」の著者として、また革新派王安石に対立する保守派の巨頭として、知られる。革新派に革新らしい詩があるように、保守派には保守派らしい詩が残っている。題して「初夏」。

四月清和雨乍晴  四月清和雨乍ち晴れ

南山当戸転分明  南山戸に当たって 転た分明なり

更無柳絮因風起  更に柳絮の風に因って起こるなく

惟有葵花向日傾  惟だ葵花の日に向かって傾くあるのみ

「四月」は陽暦の五月から六月にかけて、初夏である。「清和」は、すがすがしくなごやかなこと。「転」は、ますます、いちだんと。「柳絮」は、まっ白い綿毛をつけた柳の種子、それが空いちめんに舞うのは、晩春から初夏にかけての風景である。「葵花」は、ひまわりの花。

夏のはじめ、気候はすがすがしくなごやかに、雨が降っていたかと思うとたちまちあがる。雨があがり、南の山は玄関の真正面に、いちだんとくっくり姿を見せる。いつもなら空いちめんに舞う柳の綿毛も、今日はいっこうに風に舞いたつ気配もない。静かな昼下がり。ただひまわりの花だけが、太陽に向かって咲きほこっている。

漢詩を和訳するのは難しい。解釈はできても、訳をつけるのは、なかなか困難である。コンパクトな漢語をシラブルの多い和語に移すときに生ずる違和感、また、日本語のぬけがたいリズムである七五調や五七調のもつなだらかな雰囲気と漢語あるいは訓読調のもつ緊迫感との落差、それらが壁になる。しかし、上の詩などは、文語調の和訳をあるていど許容するかに見える。土岐善磨氏は、この詩を次のように訳している(「新版鶯の卵」春秋社)。

はつなつ

サツキの雨は いま晴れて

みなみの山は あざやかに

柳のはなの  飛びもせず

ひまわりのみぞ 日に向う

漢詩の和訳は、さらにさまざまな実験がこころみられてもよいのではないか。(一海知義著 漢詩一日一首 春・夏編 平凡社)

地図でめぐる孫文と神戸、華僑ゆかりの地

孫文は1924年11月、神戸高等女学校で「大アジア主義」講演

辛亥革命(1911年)で清朝を倒し、アジアで初めての共和国が誕生しました。1912年1月、中華民国臨時政府が南京で成立し孫文が臨時大総統に就任(1月1日~4月1日)しました。孫文(1866年~1925年)は1895年~1924年の間に18回にわたり神戸を訪れたと言われています。1924年11月28日に県立神戸高等女学校講堂(現兵庫県庁1号館のあたり)で超満員の聴衆を前に「大アジア主義」講演を行っています。来年は孫文の神戸講演から100年となります。神戸には孫文・華僑ゆかりの地が数多くあります。地図を見ながら辿ってみると神戸での歴史、孫文の足跡がよりわかりやすくなるでしょう。更に詳しく知ろうと思われる方は孫文記念館、華僑歴史博物館を訪れてみてはいかがでしょうか。(地図は孫文記念館・神戸華僑歴史博物館共作より)

3期目に入った習近平体制と台湾有事

協会の井上会長が現在の情勢と友好運動を語る

1978年から2011年までの中国の平均経済成長率は9・7%でした。これは60年代の日本の高度経済成長を30年以上続けたことに匹敵します。これが可能になったのは、中国を取り巻く国際環境が比較的平和であったこと、先進諸国の技術や経験から学べるという後発の利点を指摘できます。また、中国の政治は確かに強権的ですが、社会は基本的に安定し、質の高い安価な労働力が豊富に存在していました。経済成長期の日本と類似しています。

10年代になり、高成長から中成長へと状況が変化してきました。国内の社会的格差の拡大、少子高齢化の進行などの難題ととに、対外的にアメリカとの対立が浮上してきたわけです。昨年10月の中国共産党20回大会で、習近平が3期目の総書記となり、今年3月の全人代で国家主席に就任しました。習体制は、新型コロナによるマイナスからの回復という喫緊の問題とともに、量から質へ経済成長の転換をはかりながら、社会の安定と秩序をいかに維持するかなど、多くの国内課題を抱えています。

習体制の下、政府に対する党の指導的立場の強化が進むと見られます。党の最高指導部を習近平と関係が強い人物でかためたことで、敏速な決定がしやすくなる反面、国民の多様な意見を政策にいかに反映できるか注目すべきでしょう。また国民の人権や言論の自由が拡大するかどうか、見守っていく必要があります。

昨年8月、ペロシ米下院議長が台湾を訪問したのに対し、中国は、「一つの中国」原則が「中国の核心的利益の中の核心」であるとして、台湾海峡周辺で大規模な軍事演習を実施しました。日本では、「台湾有事は日本有事」とか「ウクライナは明日の東アジア」などという危機を煽る物騒な表現が飛び交っています。安保関連3文書は、こうした文脈の中で強引に閣議決定されたわけです。

しかし、習新体制でも中国の立場はこれまでと変わらず、台湾の平和的統一をめざすということです。また、台湾の民意は、ペロシ訪台後の世論調査でも、86.3%が基本的に現状維持です。台湾が独立を宣言するようなことは、冷静に考えれば、まず考えられない想定なのです。危機を煽り、中国を念頭に大軍拡に走るのは、日本にとって愚策としか言いようがありません。(日中友好新聞5月1日号より、後半は「友好交流活動」のページで紹介します)

神戸東灘区の伝統文化「本山だんじりパレード」

青空の下、活気に満ちただんじり囃子が響く

5月4日の昼過ぎ、東灘区を東西に走る山手幹線道路上に住吉川以東の10地区から大勢の人たちに綱で引かれてきた地車が終結し、JR摂津本山駅北側交差点付近の「練り場」で、勇壮で華麗な伝統あるだんじりの上で囃子に合わせ大声を張り上げながら色鮮やかな布切れを振る若者たちの力強い掛け声が響き、沿道を埋め尽くす大勢の見物の人たちに感動を与えていました。子供たちが並んで引く子どもパレードもあった、次世代を担う子供たちには大きくなったら頼むよ!何時までもこの文化を大切に守ってほしいと願いながら見守ります。

2020年以降は新型コロナウイルス感染症の広がりでパレードは中止を余儀なくされ、4年ぶり開催となりました。待ちに待った地元の人たちの思いが伝わってきます。パレードを企画した世話役の人たち、地車に乗る人、綱を引く人、その姿を楽しく、頼もしく見守る多くの人たちの心が一つになっているように感じ感動しました。これが昔から伝わる素晴らしい伝統文化、これからもこの貴重な文化を守り後世まで引きつぎ残してほしいものと心から願うばかりです。

沖縄、4・28「屈辱の日」から71年

4・28「屈辱の日」捨て石、分断繰り返すな!

1952年のサンフランシスコ講和条約で沖縄が本土から切り離され米統治下におかれた「屈辱の日」から今年で71年となった4月28日、玉城デ二―知事は沖縄県庁で会見し「米軍基地の集中が県民生活に影響を及ぼしている、県民の目に見える形で実感を伴う基地負担の軽減が図られる必要がある」と語りました。「琉球新報」は「屈辱の日」について以下の社説を掲載しています。

71年前の1952年4月28日、サンフランシスコ講和条約が発効した。沖縄戦で「捨て石」にされた沖縄はこの日、日本の独立と引き換えに「分断」された。「捨て石」「分断」の歴史が繰り返されてはならない。沖縄は本土決戦を遅らせるための「捨て石」として戦われ、一般住民と現地招集などを含めた12万2千人余の県民の命を失った。避難していた壕から日本兵に追い出されたり、スパイの嫌疑で殺害されたりした県民もいた。この悲劇から「軍隊は住民を守らない」という教訓を得た。

戦後、米軍は県民の土地を奪い基地を建設した。米軍の圧政にあえぐ沖縄を日本は切り離す。昭和天皇が、米軍による沖縄の長期占領を望むという「天皇メッセージ」や、それを具体化した吉田茂首相の提案が影響し、講和条約3条で施政権は分断された。1972年に日本に復帰したものの、「本土並み」の基地負担軽減を切願した県民の思いはないがしろにされ、大多数の米軍基地は残った。「捨て石」として日本防衛の盾にされ、日本独立のために切り離された挙げ句、今も全国の米軍専用施設(面積)の7割が沖縄に集中する。

知事選や県民投票などで繰り返し「反対」の民意が示された辺野古新基地の建設を強行するなど、今日に至るまで沖縄は基地を押し付けられている。今に続く苦難の歴史を忘れてはならないという意思に基づき、県民は4月28日を「屈辱の日」として記憶しているのである。ところが日本政府は沖縄の歴史に背を向けた。10年前の2013年4月28日、「主権回復の日」として式典を開いたのである。県内では強い反発が起き、式典と同時刻に抗議の大会が開かれ、「屈辱」と県民が呼ぶ日を祝賀する政府を厳しく批判した。

10年前の式典について琉球新報社が今回、県議会議員48人と県選出国会議員10人にアンケートを実施したところ「式典を開催してよかった」と答えた議員は1人だけで、「どちらでもない」が29人、「開催しない方がよかった」は28人であった。沖縄の苦難の歩みを直視しない違和感や反発が反映された結果といえる。式典から今日までの10年で沖縄の置かれた環境は厳しさを増している。現在、日米両政府は東アジア地域の安全保障環境の悪化を理由に米軍、自衛隊の基地機能の強化を沖縄で進めている。この軍備強化は、県民が求める基地負担軽減に逆行する。再び沖縄を盾にするつもりなのか。県民は強い危機感を抱いている。周辺国を軍事的に刺激すれば必然的に緊張が高まる。平和のため、同盟国だけでなく周辺国とも良好な関係を構築する外交努力により力を入れるべきだ。悲惨な歴史と屈辱は再びあってはならない。県民は日常生活の安寧と恒久平和を求めている。(4月28日琉球新報デジタル版社説より、写真は2013年4月28日、政府の「主権回復の日」式典への抗議集会、琉球新報より

中国の積極的外交に注目!

日中友好新聞東神戸版に掲載された投稿記事

3月の「全人代」を終え3期目に入った中国の習近平国家主席は、ウクライナ侵攻を続けるロシアを訪問しプーチン大統領と会談、停戦に向けての提案を行ったと伝えられました。欧米諸国がウクライナ支援を続ける中、中国が中立的立場で停戦へのイニシアティブを発揮できるかが注目されるところです。

2016年以来、外交関係を断絶していたサウジアラビアとイランが3月10日、国交正常化協定に調印したが、その仲介をしたのが中国です。今年2月、イランのライシ大統領の中国訪問などを経て実現したものです。

4月5日から7日の日程で、フランスのマクロン大統領が国賓として訪中し、閲兵式や公式会談、晩餐会など盛大な歓迎を受けました。講演でマクロン大統領は「習近平氏が提案しているウクライナ戦争に関する政治的、外交的解決案である和平案を歓迎する。フランスは和平案全体に同意するわけではないが、和平案は紛争の解決に寄与する」という趣旨のことを述べました。これに対する内外からの批判には「フランスはアメリカの下僕ではない」とも語っています。

習近平氏は4月14日、国賓として中国を訪問したブラジルのルラ大統領と北京の人民大会堂で会談しました。習近平氏はルラ大統領の訪中に熱烈な歓迎の意を示し、「中国とブラジルはそれぞれ東半球、西半球の最大の発展途上国であり、重要な新興市場国だ。互いを全面的戦略パートナーとして、幅広く利益を共にしている。新時代の両国関係の新たな未来を開き、両国人民により多くの幸福をもたらし、世界の平和・安定と繁栄・発展のために積極的で重要な役割を果たしていきたい」と述べています。

今年、日本はG7議長国として大きな役割を担っています。5月19日から広島サミットが開かれます。岸田首相には世界の平和・繁栄に貢献できる役割を果たしてもらいたいものです。(H・H、日中友好新聞東神戸支部版5月号より)

2023年第94回兵庫県中央メーデー

働くものの団結で生活と権利を守り、平和と民主主義、中立の日本をめざそう!

日時:5月1日(月)9:30~文化行事、10:00開会 雨天決行

場所:みなとのもり公園(三宮駅から南へ徒歩約15分)

・コロナの感染状況により、中止・変更する場合があります。

・感染防止対策にご協力お願いします。

・当日体調不良の方は参加をお控え下さい。

主催:第94回兵庫県中央メーデー実行委員会

◇中国では、5月1日を「労働節」と言い国民の休日となっています。2023年は4月29日~5月3日まで連休となります。

靖国神社への岸田首相の真榊奉納と高市経済安保相をはじめとする国会議員の靖国参拝に強く抗議する

内閣総理大臣 岸田文雄殿

経済安全保障担当大臣 高市早苗殿

靖国神社の春季例大祭にあたる21日、岸田文雄首相は「内閣総理大臣」の肩書で靖国神社に真榊を奉納した。

靖国神社は侵略戦争に国民を動員する精神的な支柱であっただけでなく、侵略戦争を計画・推進したA級戦犯を合祀し、侵略戦争を美化し、正当化する施設となっている。この靖国神社への供物の奉納は政教分離を定めた憲法に違反する行為であり、国を代表する首相が侵略戦争を正当化し、「大東亜戦争聖戦論」の立場に立つことを表明するものと言わざるを得ない。この誤った歴史認識は、防衛費のGDP比2%への倍増などの軍拡とあわせて、日本の軍事大国化への疑念を生じさせ、軍拡の連鎖を招くことを強く危惧する。

さらに、この春季例大祭にあたり、高市早苗経済安全保障担当大臣の他、約90人の超党派の国会議員が参拝したことも、日本を代表する政治家の「本音」が侵略戦争正当化・美化にあることを明らかにし、日本の歴史認識に対する強い疑念を国際社会の中に広げたと言わざるを得ない。

日本中国友好協会は、侵略戦争を美化・正当化する靖国神社への真榊の奉納と参拝に強く抗議する。あわせて、日本政府に対して、侵略戦争の深い反省からすべての紛争を平和的手段で解決することを誓った日中共同声明と日中平和友好条約の精神に立ち返り、アジアと世界の平和と安定のために平和国家としての役割を果たすことを強く求めるものである。

2023年4月22日  日本中国友好協会

(写真はNHKより)

「アジアから問われる日本の戦争」展

展示と講演会、映画上映会も開催

日本の侵略戦争・植民地支配の展示と、現在進行中の戦争準備について、沢山の展示をしています。過去の戦争、そして今起こりつつある戦争のことについて、一緒に思いを馳せて下さい。

日程:5月5日(金・祝)~6日(土) 午前10時~午後7時

会場:エル・おおさか  ◇入場無料

プレイベント 5月4日(木)午後6時~

◇シンガーソングライター 川口真由美コンサート

「すべての武器を楽器に」

プチ・エル(エル・おおさか地階)

限定 80人

前売:2500円(学生・障がい者1500円)

当日:3000円(学生・障がい者2000円)

前売お申込み https://qr.paps.jp/rHtHW

◇伊波洋一(参議院議員)講演会

「岸田軍拡・安保3文書で日本全国が戦場になるってホンマなん?」

日時:5月5日(金・祝)午後2時~(午後1:30開場)

会場:エル・おおさか6F大会議室

資料代:500円(学生・障がい者無料)

◇映画上映会 5F視聴覚室

10:30~ はだしのゲン2

13:00~ ナナイの涙

15:00~ 南京!南京!

17:40~シー・オブ・ミラクルス

※戦争展への協力金として1日500円

主催:「アジアから問われる日本の戦争」2023実行委員会

中露が経済協力中心に共同声明

「冷戦脱却、対話を」中国の立ち位置

習近平主席が3月21日、ロシアを訪問、プーチン大統領と会談した。経済協力を中心に共同声明を出した。はっきりした「和平」のプロセスは見えなかったが、訪問前に発表した「ウクライナ危機の政治的解決に関する中国の立場」は、中国外交の現在を正面から明らかにしたものだった。

岸田首相は、習近平主席訪ロに合わせるように、ウクライナを訪問。「米国としては日本を中国のライバルとして外交戦をさせるために、習近平の訪ロと重なる日程で岸田をウクライナに行かせた観がある」(田中宇「国際ニュース解説3月23日版」)との見方もあるほど。日本外交の主体性が改めて問われていると言えそうだ。

ポジションペーパーでは、①各国の主権尊重②冷戦思考の排除③停戦・戦闘の終了④和平対話の始動⑤人道危機の解決⑥民間人と捕虜の保護⑦原子力発電所の安全確保⑧戦力的リスクの減少⑨食糧の国外輸送の保障⑩一方的制裁の停止⑪産業チェーン・サプライチェーンの安定確保⑫戦後復興―をあげている。「停戦・戦闘の終了」「和平対話の始動」では、「可能な限り早期に直接対話を再開」させ「国際社会」に、交渉再開の「プラットフォームの提供」を求め、中国は「建設的な役割」を果たすとしている。

しかし、例えば米国は「ロシアが報復を開始する前に再編成する方法を提供するだけ」と冷ややかで「ウクライナ支援」名目の戦争参加を続ける構えだ。ロシアのウクライナ侵略に何の正当性もないことが確かにしてもこれが即「ウクライナ軍事支援」であってはならないのは当然だ。

日本国憲法9条は、「戦争」と「武力による威嚇」「武力の行使」を「永久に放棄」し、「前文」は「全世界の国民」に「平和的生存権」を認めている。日本外交はその線に沿って展開されなければならない。しかし、米国と共同歩調の岸田内閣は、その逆で、昨年来、日米印豪の「クワッド」首脳会議、オーストラリアとの共同宣言、NATO首脳会議への出席などを通じて「対中包囲網」の強化、拡大に努めてきた。発想はまさに「米国・NATO VS ロシア」の「冷戦思考」そのもので、世界平和には背を向けている。(丸山重威・ジャーナリズム研究者、日中友好新聞4月15日号「中国レーダー」より、写真はCRI)