白楽天の「賣炭翁」を読む

10月13日に開催された漢詩を読む会は、中唐の詩人・白楽天(772~846)の新楽府五十首(三十二)「賣炭翁」を丹羽博之大手前大学教授の解説と映像で読みました。また、この詩を利用して詠んだと言われる阪井虎山(1798~1850・安芸の人)の「賣花翁」も併せて読みました。何れも翁の苦労を詠んでいます。

「賣炭翁」白楽天新楽府五十首(三十二)

伐薪焼炭南山中  満面塵灰煙火色
両罠蒼蒼十指黒  賣炭得銭何所営
身上衣裳口中食  可憐身上衣正単
心憂炭賤願天寒  夜来城外一尺雪
暁カ駕炭車氷轍  牛困人飢日家高
市南門外泥中歇  翩翩両騎来是誰
黄衣使者白衫児  手把文書口稱勅
迴車叱牛牽向北  一車炭重千餘斤
宮使驅將惜不得  半匹紅綃一丈綾
繫向牛頭充炭直

「賣花翁」阪井虎山 住在洛城東

竹扉半破鬢如蓬  自少栽花到七十
培養別伝一家法  栽花雖巧拙謀生
未免街頭喚且行  日暮還家自歎息

次回「漢詩を読む会」12月8日(土)開催予定

10月の「漢詩を読む会」は白楽天の諷喩詩

炭売り爺さんの悲劇を詠った「売炭翁」を講読します

白楽天は少壮官僚であったころ、時の政治を批判した「新楽府五十首」を詠んだ。これは『詩経』以来の風刺の詩であり、白楽天はそれを諷喩詩と名付けた。その中でも有名な炭売り爺さんの悲劇を詠った「売炭翁」を今回は講読します。紫式部もこれらの作品を読んでいます。

第13回「漢詩を読む会」

  • 日時:2018年10月13日(土)午後2時~4時
  • 会場:日中友好協会兵庫県連合会「会議室」(阪急岡本駅西すぐ)
  • 講師:丹羽博之 大手前大学総合文化学部教授

テーマ:白楽天の政治批判の詩「売炭翁」

資料代:1,000円  事前にお申込み下さい。

主催:日本中国友好協会兵庫県連合会「神戸中国文学同好会」

連絡先:Tel&Fax(078)412-2228

E-mail: okmt50@nicchu-hyogokenren.net

白楽天と元稹 友情の詩を味わう

左遷の境遇を思いやった詩を交わす

元稹(779~831)字は微之、河南(洛陽県)の人。15歳で明経科に及第した俊才。左拾遺となっては鋭い時局批判を行い、河南の尉に左遷され、監察御史となっては宦官の仇士良と喧嘩して顔を傷つけられたうえ、江陵(湖北省)に放逐され、また通州(四川省)に左遷されている。白楽天の失意の境遇を思いやった詩を送っている。

白居易(772~846)字は楽天、下邽(陝西省渭南)の人。29歳の時、最初の受験で進士科に及第、17人の及第者中最年少。32歳で試判抜萃科に及第。及第者8人の中に元稹がおり、共に校書郎を授けられ終生の友情を交わすきっかけとなった。35歳で才識兼茂明於体用科に及第、官吏の道を歩みだす。翰林学士、左拾遺等を歴任し、母の喪に服すため辞職。43歳の時、太子左賛善太夫となり、翌年宰相武元衡の暗殺事件が起きた際、犯人を捕らえるよう上奏し、越権行為で咎められ、江州(江西省九江)司馬に左遷された。元稹と左遷の境遇を思いやった詩を交わしている。

船中讀元九詩 舟中、元九の詩を読む 白居易

把君詩巻燈前讀 君が詩巻を把って灯前に読む

詩盡燈残天未明 詩尽き灯残りて天未だ明けず

眼痛滅燈猶闇坐 眼痛み灯を滅して猶お闇坐す

逆風吹浪打船聲 逆風浪を吹いて船を打つ声

聞樂天授江州司馬 楽天の江州司馬を授けられしを聞く 元稹

残燈無焔影憧憧 残燈焔無く影憧憧

此夕聞君謫九江 此の夕べ君が九江に謫せらるるを聞く

垂死病中驚坐起 垂死の病中驚いて坐起すれば

暗風吹雨入寒窓 暗風雨を吹いて寒窓に入る

※白楽天の詩は日本の平安文学にも大きな影響を与えている。

第13回「漢詩を読む会」は10月13日(土)午後2時~

第12回「漢詩を読む会」

中国文学史上最高の友情の詩を紹介

8月の「漢詩を読む会」は中国文学史上最高の友情の詩を紹介します。科挙に合格した白楽天は順調に役人生活を送っていたが、江州司馬に左遷される。同じ年、科挙に合格した無二の親友元稹も左遷の身であったが、白楽天の失意の境遇を思いやった詩を送っている。それを詠んだ白楽天は詩を返している。二人の互いを思いやる友情の詩を味わいます。

  • 日時 2018年8月11日(土)午後2時~4時
  • 会場 日中友好協会兵庫県連「会議室」(阪急岡本駅南を西へ徒歩約1分、1Fに「鳥貴族」があるビルの3F)
  • 丹羽博之 大手前大学総合文化学部教授
  • テーマ:白楽天と元稹の友情

資料代:1,000円  事前にお申込み下さい!


丹羽博之先生プロフィール

神戸大学大学院修了 一海知義先生に40年以上師事

  • 日本文学に影響を与えた漢詩文・日本漢詩文
  • 白楽天・明治唱歌・朝鮮半島の漢詩と日中の漢詩

主催 日中友好協会兵庫県連合会

☎&Fax(078)412-2228    E-mail:okmt50@nicchu-hyogokenren.net

李白の「黄鶴樓送孟浩然之廣陵」を読む

故人西辭黄鶴樓 故人西のかた黄鶴楼を辞し
煙花三月下揚州 煙花三月揚州に下る
弧帆遠影碧空盡 弧帆の遠影碧空に尽き

唯見長江天際流 唯だ見る長江の天際に流るるを

友人は黄鶴楼に別れを告げ、これを西にして、霞(かすみ)立つ三月、揚州に向かい長江を下る。一つの舟の帆が、遠ざかり、ついにその影が碧の空に吸い込まれるように消えてしまう。後にはただ、長江が空のはてに流れゆく。

李白(701~762) 盛唐の詩人

字は太白、蜀(四川省)の人とも、山東(山東省)の人とも、隴西成紀(甘粛省)の人ともいうが、蜀の青蓮郷(綿陽県)とするのが通説。号は青蓮居士、酒仙翁または詩仙と称された。

6月9日の漢詩を読む会は、懐古より「蘇臺覽古」「越中覽古」と望廬山瀑布の七言絶句三首も読みました。李白の「望廬山瀑布」の三句目、飛流直下三千尺の部分、芭蕉はこの詩を読んでいて、奥の細道「日光」で“岩洞の頂より飛流して百尺”と記したのではないかと言われています。(写真:現在の黄鶴楼)

次回、第12回「漢詩を読む会」は8月11日(土)午後2時

テーマ:白楽天と元稹の友情

(当初8月12日としていましたが、11日に変更しました)

第11回「漢詩を読む会」

故人西の方黄鶴楼を去り

今回は李白と「春眠暁を覚えず」で有名な孟浩然との交遊についてお話し頂きます。孟浩然が揚州に下るのを見送った李白の僅か二十八文字の七言絶句。しかし、広大な中国の大河とぽつんと浮かびやがて消えゆく孤舟の対比が絶妙です。

  • 日時:2018年6月9日(土)午後2時~4時
  • 会場:日中友好協会兵庫県連合会「会議室」
  • 講師:丹羽博之 大手前大学総合文化部教授
  • 資料代:1,000円       どなたでもご参加頂けます

日本中国友好協会「神戸中国文学同好会」

お問合せ:☎078-412-2228

E-mail:okmt50@nicchu-hyogokenren.net


黄鶴楼送孟浩然之広陵 李白

故人西辞黄鶴楼 故人西のかた黄鶴楼を辞し
烟花三月下揚州 烟花三月揚州に下る
孤帆遠影碧空尽 孤帆の遠影碧空に尽き

唯見長江天際流 唯見る長江の天際に流るを

漢詩を読む会、「涼州詞」を読む

盛唐の王之渙と王翰の「涼州詞」2首を読む

4月7日に開催した第10回「漢詩を読む会」は王之渙と王翰の涼州詞2首を丹羽博之大手前大学教授の解説で読みました。

王之渙(688~742)涼州詞 

黄河遠く上る白雲の間 一片の孤城万仞の山

羌笛何ぞ須いん楊柳を怨むを 春光渡らず玉門関

黄河上流の遠く遥かな西の果て、ポツンと立つ砦、途方もない距離感と荒涼とした世界の孤独感。遠い砂漠の前線で涙もかれた兵士の悲しみが突き上げてくる。春の光も届かない所だという絶望的な心境、悲哀を強烈にうたっている。


王 翰(687~726?)涼州詞

葡萄の美酒夜光の杯 飲まんと欲すれば琵琶馬上に催す

酔うて沙場に臥すとも君笑うこと莫かれ 古来征戦幾人か回る

葡萄酒は西方から伝わった珍しい物、中国ではない西の方にあるとい雰囲気が伝わる。寝転がって飲んでいる者、馬上で琵琶を弾いている者、殺伐とした急き立てられるような寸暇の気晴らし。明日も知れぬ命、その苛酷な運命を紛らわそうと束の間の歓楽。戦場のやりきれない気分が表現されている。


次回は6月9日開催予定です。

第10回「漢詩を読む会」

シルクロードの漢詩―「涼州詞」の世界

今回は日本人にも人気の高いシルクロードを詠んだ漢詩を講読します。砂漠地帯の異国のエキゾチックな風景と異民族の風習を詠んだ詩を取り上げます。学徒出陣の若人もこれらの漢詩に共感していたことも紹介されます。

・日時 2018年4月7日(土)午後2時~4時

・会場 日中友好協会兵庫県連合会「会議室」

・講師 丹羽博之 大手前大学総合文化部教授

資料代:1,000円  事前に下記へお申込み下さい

主催:日中友好協会兵庫県連合会「神戸中国文学同好会」

Tel&Fax:078-412-2228   E-mail:okmt50@nicchu-hyogokenren.net

(終了しました、次回は6月9日に開催予定です)

第10回「漢詩を読む会」

シルクロードを詠んだ漢詩を講読します

砂漠地帯の異国のエキゾチックな風景と異民族の風習を詠んだ詩を取り上げます。学徒出陣の若人もこれらの漢詩に共感していたこと紹介します。

  • 日時 2018年4月7日(土)午後2時~4時
  • 会場 日中友好協会兵庫県連合会「会議室」
  • テーマ:シルクロードの漢詩―「涼州詞」の世界
  • 講師 丹羽博之 大手前大学総合文化部教授

資料代 1,000円  参加は事前に下記へお申込み下さい

主催:日中友好協会兵庫県連合会「漢詩を読む会」

お問合わせ・お申込み ☎&Fax:078-412-2228