中国旅の思い出(第10回)

ラサの心臓 ― 大昭寺(ジョカン寺)で触れた祈り

昼から、布達拉宮のすぐ近くにある大昭寺(ジョカン寺)へ向かいました。 ここも世界遺産に登録されており、ラサの中心に位置するチベット仏教の聖地です。

大昭寺はポタラ宮から東へ約1km。 7世紀、吐蕃王朝のソンツェン・ガンポ王によって建立されました。 寺院の中心には、唐から嫁いだ文成公主が持参したとされる 釈迦牟尼12歳等身像が安置されています。 (残念ながら内部は撮影禁止でした)

内部はバター灯(蠟燭)の明かりだけが揺れる薄暗い空間で、 旅行者の私と、熱心な信者たちが同じ通路を行き交います。 その雰囲気に、少し罰当たりな気持ちになり、 自然と背筋が伸びるような神妙さを覚えました。

■ チベット人の心の中心地

大昭寺は、チベット仏教の総本山であり、 チベット人なら一生に一度は必ず参拝したいと願う心の中心地です。

寺院は西向きに建てられています。 これは建立当時の妃・ティツン妃がネパール出身で、 故郷の方向に向けて建てられたためだと伝えられています。

屋根の上には黄金の法輪と、 その法輪を回すように跪く二頭の鹿が飾られています。 法輪は釈迦の教えの象徴で、 チベット仏教の精神を表す大切な意匠です。

■ 五体投地 ― 絶対的な帰依の形

大昭寺の前では、多くの信者が五体投地をしていました。

五体投地とは、 両手・両膝・額の五つを地面に投げ伏して礼拝する方法で、 対象への絶対的な帰依を示す、最も丁寧な礼拝のひとつです。

巡礼者たちは敷物や膝当てを準備し、 一回一回、丁寧に地面へ身を投げ伏しながら進んでいきます。 その姿は、ただの宗教行為ではなく、 人生そのものを捧げるような深い祈りに見えました。

■ 2400kmを五体投地で ― 祈りの旅

巡礼者は大昭寺へ向かう巡礼道「バルコン」を通り、 マニ車を回しながら歩く人もいれば、 五体投地を繰り返しながら少しずつ前へ進む人もいます。

中には、はるか遠くの村から何ヶ月、何年もかけて ラサを目指す巡礼者もいます。

2017年には、 チベットの小さな村から2400kmを五体投地で約1年かけて巡礼した 子供を含む3家族11人の村人を描いた映画 『ラサへの歩き方 祈りの2400km』が上映されました。

信じられないほどの距離ですが、 彼らは「ズルをしないこと」「他者のために祈ること」を大切にしながら進んだといいます。

チベット仏教の教えは、 現代にも通じる深い意味を持っていると感じました。

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