中国旅の思い出(第3回)

「五岳を見ず」と言わせる名山 ― 黄山の仙境へ

前回の終わりに触れたことわざ、 「五岳から帰れば山を見ず、〇〇から帰れば岳を見ず」。 この“〇〇”に入るのが、今回ご紹介する黄山(こうざん)です。

黄山は安徽省の南端、上海・江蘇・浙江の西側に位置し、 中国人が「天下第一」と称えるほどの名山。 その美しさは古来より水墨画の題材として愛され、 峰々と雲海が織り成す風景は、まさに仙人が住む世界――仙境と呼ばれています。

黄山の四絶は、 怪石・雲海・奇松・温泉。 「天下の名勝、黄山に集まる」と言われるのも納得の景観です。

■ 69の峰、16の名峰を目指して

本来なら、仙境のような黄山をゆったり巡るのが理想でしょう。 しかし、貧乏性の私は「ここが良い」「あそこが美しい」と聞けば、 どうしても全部見たくなってしまいます。

黄山には69の峰があり、そのうち16の峰が特に素晴らしいとガイドブックに紹介されていました。 山中で1泊する予定だったので、 「2日間で16峰すべて制覇しよう」と意気込んで出発しました。

黄山の標高は約1800m。 1000m前後の峰が多いのですが、 峰から峰へ移動するたびに、必ず下って、また登る。 これが本当に堪えます。

1日目の最後に登った峰では、 宿に明るいうちに着きたくて、景色をゆっくり楽しむ余裕もなく下山。 ところが宿の人から、 「黄山で一番美しい夕日は丹霞峰(排雲閣)ですよ」と聞かされ、 それがまさに“最後に登った峰”だったと知り、思わずがっくり。 さすがに登り返す気力は残っていませんでした。

■ 光明峰で迎えた、忘れられない日の出

翌朝は暗いうちに出発し、 日の出が最も美しいと言われる光明峰へ向かいました。

まだ夜明け前だというのに、山頂はすでに多くの観光客でいっぱい。 やがて東の空が白み始め、太陽が顔を出した瞬間、 あたり一面に歓声と拍手が響き渡りました。

雲海の向こうから昇る朝日を拝むことができ、 胸がいっぱいになるほどの感動でした。

■ 最後の峰、登るか引き返すか

感動の余韻も束の間、 2日目の残りの峰を次々と巡り、 ついに最後の峰に差し掛かりました。

すぐ近くにはロープウェイ。 「ここで終わりにするか、それとも登るか」 本気で悩みました。

しかし、 「二度と来ることはないだろう」 そう思い、最後の力を振り絞って登ることを決断。

達成感はありましたが、 正直、体力的には限界に近かったです。

■ もし訪れるなら、三主峰を

黄山には三主峰と呼ばれる 蓮花峰・光明峰・天都峰があります。

この三つに絞って登れば、 景色をゆっくり味わいながら、 優雅に黄山を楽しめるのではないかと思います。

ぜひ、機会があれば挑戦してみてください。