中国旅の思い出(第11回)

客家の知恵が生んだ要塞住宅 ― 福建土楼に泊まる

今回は、中国の特徴的な伝統住宅を巡ります。 まずご紹介するのは、2008年に世界遺産に登録された福建土楼(フージエン・ツウロウ)です。

福建省南端、広東省に隣接する永定という町には、 客家の人々が13世紀頃から建て始めた土楼が点在しています。 永定には46ヶ所の土楼群があり、建物は長方形や円形をしていて、 壁の厚さは1〜2m、3〜5階建て。 数十家族から、最大では200家族が共同生活を営んでいます。

入り口は一つだけ。 外敵から身を守るための“要塞住宅”としての役割も果たしていました。

土楼群が世界遺産に申請された際、 アメリカが衛星写真を見て 「これはロケットの発射台ではないか?」 とクレームをつけたというエピソードも残っています。 円形の巨大建築が並ぶ様子は、確かにそう見えなくもありません。

■ 予約できない宿 ― とにかく行ってみる

中国国内を旅するとき、私はいつも 「往復の航空券と宿泊先だけは必ず予約してから出発」 というスタイルでした。

しかし今回は、 「土楼に泊まれる」という情報があったものの、どうしても予約が取れず、 「とにかく行ってみよう」と永定へ向かいました。

永定駅で列車を降りると、ちょうど土楼群へ向かうバスがあり乗車。 終点で降りると、そこには小さな食堂が一軒あるだけで、他には何もありません。

まず昼食をとろうと食堂に入ると、客は私一人。 壁には手書きの土楼群の地図が貼られており、 それをじっと見ていると、店主が「旅行者か?」と声をかけてきました。

「そうだ。土楼を見て回りたい」と答えると、店主は二つのことを教えてくれました。

  1. バスで回るなら1日1ヶ所。バイクタクシーなら半日で有名どころを回れる。

  2. 泊まる場所を探しているなら、近くの土楼で宿泊できる。

その場で翌朝のバイクタクシーを予約し、 土楼での宿泊もお願いしました。

昼食後、店主の子供(6〜7歳ほどの男の子)が 宿泊する土楼まで案内してくれました。

扉のついた一室で、 木のベッド、タオルケット1枚、扇風機1台、小さな窓が一つ。 それだけの簡素な部屋でしたが、 1泊20元という破格の安さ。 私が経験した中で最安値の宿泊でした。

■ 暗闇の部屋で見つけた“救いの紐”

鍵を預かり、観光用に公開されている土楼を見学しました。 公開されている土楼は非常にきれいに整備されていますが、 一般の土楼では今も多くの人が生活しており、 内庭では豚や鶏が飼われ、井戸を囲んで共同生活が営まれています。 大きな土楼には祖廟もあり、客家の文化が息づいていました。

夕方、食堂に戻って夕食とビールを楽しみ、 宿泊する土楼へ戻りました。

階段の位置、部屋の場所も間違えず扉を開けたものの、 中は真っ暗。 照明のスイッチを探すも見つからず、 周囲には明かりが一切ないため、 暗闇の中で手探りでベッドを探しました。

小さな部屋なので、すぐにベッドにぶつかりましたが、 その瞬間、頭に何かが触れました。 それが電灯のスイッチの紐だったと分かった時の嬉しさは、 今でも忘れられません。

■ バイクタクシーで土楼群を巡る

翌朝、食堂前からバイクタクシーに乗り、 手書きの地図にあった有名な土楼群へ向かいました。

言葉はあまり通じませんでしたが、 運転手は写真に絶好のスポットへ次々と案内してくれ、 とても助かりました。

アメリカが「ロケット発射台では?」と疑った土楼群にも行くことができ、 その風景は中国の郵便切手にも採用されています。

今も息づく土楼の生活に触れられたことは、 大変貴重な経験でした。

最後に運転手は永定駅まで送ってくれ、 心から感謝した旅となりました。

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