「香港問題」で山本恒人大阪経済大学名誉教授が講演

9月13日(日)神戸市内で開催された「どうなる香港!学習講演会」で山本恒人大阪経済大学名誉教授が「香港基本法=一国二制度遵守は国際公約―なぜ中国政府は〈最善手〉をふみ外したのか―」をテーマに講演し市民50人が参加しました。

中国は19世紀始めまで世界トップの経済大国であった

英国が仕掛けた阿片戦争に敗れ、1842年の中英共同声明で香港島が英国領となり、その後、新界などを99年間英国が租借し香港全域が植民地化しました。中国(清朝)は19世紀初頭、世界のGDPの三分の一を占めていた超大国であったが、阿片戦争に敗れ、中華世界が半植民地となりその恥辱は想像を絶するものがあります。

新中国を建国するのに100年を要した

その後の帝国主義諸国による侵略に抗して新中国(中華人民共和国)を建国するのに100年を要しています。1984年の中英共同声明で香港返還を決定し、世界に表明しました。1997年香港は中国に返還され、「一国二制度」が開始しました。山本教授はその後、2019年の「逃亡犯条例」改正案をめぐる香港市民の大規模な反政府デモに至るまでの香港の動きを具体的に紹介。

香港返還後のスタートラインは「沿海発展戦略」

「沿海発展戦略」は別称「広東の香港化、中国の香港化」とも呼ばれ、NIEs(ニーズ:新興国群―韓国・台湾・香港・シンガポール)の一員としての香港経済発展の経験と教訓が大きな役割を果たしました。中国人の「融通無碍」の柔軟さに世界は驚かされたものです。

中国が「平和・反核・軍縮・自由と民主主義・環境保全」に向け東アジアと世界におけるリーダーシップを発揮することを願う

現在、香港で繰り広げられている事態は、中国の世界における存在が巨大化するにつれて、統治方式が次第に国内基準だけでは通用しなくなり、国際的な場でも認知される新たな基準を中国自らが開発し、獲得していく新しい時代を迎えています。それゆえ、国際公約・50年(1997年―2047年)にわたる香港の「一国二制度」を放棄する行為を深く憂慮するものです。

香港への「国家安全維持法」導入には批判と擁護、必然論の両論がある

山本教授は、香港への「国家安全維持法」導入については批判的報道と擁護、導入必然論があることを具体的な内容の一部を示し紹介しました。さらに、中国における「一党支配」体制と対外路線について、後発国における国民国家形成のための凝縮力としての制度「党国体制」と、スターリン時代のソ連を踏襲した「プロレタリア独裁」型中央集権体制の下で、肥大化する「官僚制」国家とそれを統括する超法規的存在(主権在党)としての共産党の一党支配、「超法規的主権在党」は社会主義とは相いれないものですと語りました。

スタンフオード大学のフランシス・フクヤマ氏の重要な指摘

「中国は最も早く『近代国家』を成立させました。官僚制があって中央集権的で、能力本位で、さほど縁故主義ではない。中国はそうした制度をつくるのが得意です。ただ、そこには、『法の支配』や『民衆に対しての説明責任』という仕組みがない。この2つは国家を縛り、国家権力が公共的な目的で使われるよう担保するものです」。「権力行使に制度的な抑制がきかないため、中国に悪い皇帝(トップ)が出たときには、対処する方法がない。これは歴史的に中国が抱えている問題で、未解決なままです」とフクヤマ氏の言葉を紹介し山本教授は講演を終えました。

講演会参加者から多くの質問や意見が出ました

講演終了後、会場から多くの質問やアンケートで講演に対する感想、意見が出ています。その一部を紹介します。

「『香港国家安全維持法』導入など『一国二制度』の下で香港の本土並み支配をめざす中国指導部の狙いはどこにあるのか」「中国政府は一体何を恐れて香港市民の運動を弾圧しているのか」「中国共産党が超法規的存在となっている状況は、戦前日本の天皇のようだ、米国も今はそのようになっているように思う、それが混乱の原因ではないか」「今の中国は、民間の大資本も出現して、階級関係がよくわからなくなっているがどう思うか」「この先、中国はどう進んでいくのか、今の路線が大きく修正されて社会主義の大道に立ちかえることが出来るのか、先が見えず不安です」「『法の支配』や『民衆に対しての説明責任』の欠如はまさに今の日本です」「中国では中国共産党が超法規的存在になっているようですが、戦前の大日本帝国では天皇が、戦後では米国が超法規的的存在になっているように思います。そこに国をゆがめる根源があるのではないか」。

どうなる香港!徹底解説「学習講演会」

香港基本法=一国二制度遵守は国際公約

―なぜ中国政府は〈最善手〉をふみ外したのか―

6月30日全人代常務委員会は国家安全維持法を制定、習近平国家主席の署名によって即日施行されました。そして矢継ぎ早に香港行政当局のもとに「国家安全維持委員会」が設置され香港の司法・警察当局を指揮下におきました。また、香港に中国政権による派遣監督署「国家安全維持公署」が設置され「香港国家安全維持委員会」に対する監督指導が始まりました。

7月1日の民主派のデモに対して10人を拘束、うち1人を「香港国家安全維持法」違反で起訴しました。香港の「自治」を進めながら、国の「秩序と統一」を図り、50年間(1997~2047年)かけて、どういう国家を建設していくかという「世界史的課題」(最善手)を中国政権はいとも簡単に投げ捨ててしまいました。この経過を振り返りながら私たちはどう対処していくべきか、ご一緒に考えましょう。

日時:2020年9月13日(日)午後2時~4時

会場:東灘文化センター8階会議室1、2(JR住吉駅すぐ)

講師:山本恒人 大阪経済大学名誉教授

資料代:500円 事前にお申込み下さい マスク着用

主催:日本中国友好協会兵庫県連合会

Tel&Fax(078)412-2228

E-mail:okmt50@nicchu-hyogokenren.net

「国家安全法」の香港導入決定で協会が理事長談話発表

全人代での国家安全法制決定に関し、6月16日、日本中国友好協会本部は理事長談話を発表し、報道各社に送付しました。以下はその全文です。

全人代での「国家安全法制」決定に関し、中国政府による香港基本法と「1国2制度」の原則遵守を求める

5月28日、全人代で香港の「国家安全法制」(以下「安全法」)が採択されました。同法では香港での国家分裂行動、政府転覆、外国勢力の関与、さらに組織的テロ活動などが禁止されることとなっています。昨年行われた逃亡犯引き渡し条例に反対する抗議行動を、中国政府は外国勢力の関与による不法な組織的テロ行為、国家分裂活動と見なし、安全法が不可欠としていますが、国際世論は強く反発しています。さらに中国の国家安全当局が香港に配置されて監視活動が繰り返される事態に至っています。

植民地香港を平和的に、繁栄を維持しつつ返還させるため、中国はイギリスとの協定で「1国2制度」「資本主義50年不変」を世界に約束しました。1997年の返還式典にはアメリカを含む世界各国が招待され、香港の繁栄を共に慶祝しました。この歴史的事業を成功させ、その後経済大国となった中国がこの約束を守るのかどうかを世界中が注目しています。仮にも「1国2制度」が崩壊すれば、香港の繁栄と香港市民の将来だけでなく、中国に対する世界の信頼は奪われることになるでしょう。

返還時には香港独立や革命を主張する勢力は皆無でしたが、残念ながら返還からの20年余りの間に香港市民の不安や反発が強まり、現在は香港を脱出する市民も増え、全人代決定が実行されればその数が急増することが懸念される事態となっています。あらゆる暴力に反対する立場に立つ者として、昨年の主催者発表100万人の平和的な抗議行動、区議選等で示された市民の感情に配慮し、冷静に市民との対立を回避し、基本法と「1国2制度」の原則を厳守することこそが香港の繁栄維持に向けての唯一の解決策と考えます。

香港基本法では「1国2制度」の原則の下で、集会、結社、デモなどの自由が保障されていますが、死文化してしまうことを香港市民は恐れています。中国は多くの国際人権条約の批准国として人権規約を順守する義務があることは言うまでもありません。

いまや香港の将来は香港市民だけのものではありません。「1国2制度」の破綻は中国本土と香港両市民間の信頼の醸成を妨げ、日本における反中感情をさらに高めることと強く懸念します。国際紛争の平和的な話し合いによる解決を主張してきた中国が、平和を願う大国としての責任を果たすことを心から願い、力ではない平和的な話し合いによって事態が打開されることを強く求めるものです。

香港問題は当事者の平和的な努力で解決を

日中友好協会田中義教理事長が談話を発表(要旨)

香港で学生・市民らによる大規模な抗議行動が始まって3ヵ月以上が経過した。香港行政府の「逃亡犯引き渡し条例改正案」を巡り抗議デモが起こり、主催者によれば最大時200万人、全人口700万人の香港市民の相当数が参加したことになる。

林鄭月娥行政長官は9月4日、正式に条例案撤回を決定した。解決に向けて第1歩が始まったといえよう。しかし学生・市民らの要求する5つのうち1つが解決したが、課題は残っており、今後の展開はなお予断を許さない。

当初、整然としたデモであったが、一部の過激な行動を口実に警察の過剰警備により負傷者が出ると学生らが激しく反発し、対抗手段もエスカレート、空港、地下鉄、市電などの運行にも支障が生じ、香港経済にも大きな影響が出ている。大学生、中高校生の授業ボイコットや各企業、医療現場でのストライキも起こっている。

香港はイギリスから返還された中国の領土である。かつ返還時に中英双方が、資本主義を50年間保証した特別行政区である。その「一国二制度」が次々となし崩しにされ、香港の自由と民主主義が崩壊につながる、との強い危機感を多くの市民が感じている。

近年でも銅羅湾書店事件、愛国主義教育、国旗使用の強化、高速鉄道直通による車内で本土の法律適用等々が発生し、本土化が急速に進んでいる。そこへ今回の「逃亡犯引き渡し条例改正案」の提出である。この改正が通れば「犯罪者」とされた者が中国本土に引き渡されることが可能になり危機感から多くの市民・学生が立ち上っている。

いま世界中が香港の趨勢に関心を向けている。中国と覇を争うアメリカは積極的に発言しているが、香港問題は基本的に香港行政府、市民、中国政府が解決すべき問題であり混乱に乗じて他国が関与すべきではない。問題をさらに混乱させるだけである。一方、当事者に求められているのは暴力や脅しではなく、冷静に事態を解決することである。

香港と日本は、経済的にも人的交流の面でも極めて関係が深い。それだけでなく過去の一時期3年余の長きにわたり侵略した日本は、香港史上最も暗黒の時代といわれたことを忘れず、香港の発展を願っていきたい。(日中友好新聞9月25日号理事長談話要旨より)

港珠澳大橋10月下旬開通見込み

開通式は珠海で、通行料最高は300元に決定

香港・珠海・澳門を結ぶ「港珠澳大橋」は10月下旬に開通する見込みとなった。9月28日付香港各紙によれば、特区政府及房屋局は27日、3地区政府が28日から3日間にわたり初の合同試運転を行うことを明らかにした。直行バスや車両の通関、緊急時の消防・救護車両の通行、各地の税関・出入境管理所の運営をテストし、3地の通関・出入境条件が整った後に中央政府に開通日時の確定を申請することとなる。開通式は珠海で行われるものとみられる。

港珠澳大橋管理局は8月24日、広東省政府の承認を経て港珠澳大橋の車両通行料を正式に発表した。25日付香港各紙によると、標準通行料は小型車両(自家用車、タクシー)が150元、大型客車(越境バス)が200元、シャトルバスが300元、コンテナ車が115元、普通貨車が60元となっている。(日刊香港ポストより、写真上・港珠澳大橋、下・海底トンネル 百度百科より)

※港珠澳大橋は2018年10月23日、珠海市で開通式典が行われ習近平国家主席が出席し開通宣言しました。24日から通行が開始されます。

香港高鉄9月23日開通

香港と中国本土をつなぐ「広深港高鉄」が2018年9月23日に開業します。香港-武漢の最速列車が4時間16分、深圳までは14分の所要時間となります。運賃は深圳北-西九龍が72人民元、武漢-香港は約610人民元(約700香港ドル)になる見込みです。

開通時のダイヤは1日127往復で短距離列車(概ね香港-広州間)が114往復、長距離列車(北京、上海など内地14都市)が13往復になる模様です。(「香港01」より)

港珠澳大橋まもなく開通

香港~珠海~澳門を結ぶ世界最長の海上橋

珠江デルタ地域を高速道で結び、人の往来、物流の拡大により経済のさらなる発展をめざして2009年12月15日に着工し建設を進めてきた港珠澳大橋が8年余りの難工事を経て間もなく開通することとなりました。大橋の全長は55Km(橋の最長区間29.6Km)で海中に3か所の人工島(東人工島・西人工島・拱北人工島)を  つくり洋上の船舶通行を確保するため海底トンネル(全長6.75Km)を建設しています。大橋通行にあたり出入境ゲートが3か所(香港・珠海・澳門)に設けられ、通行者は出発地の出境検査と目的地の入境検査を受ける「三地三検」を採用することとなっています。

海上大橋は片側3車線で車両走行速度100Km/hの高速道路となっており、現在の陸路所用時間4時間を大幅に短縮し、香港~澳門間を現在運航している高速船・ターボジェットでは、所用時間60分~70分が大橋を利用すれば30分に短縮されます。通行量は1日5万台、年間2000万台を見込んでおり、高度な技術と総工費約1,100億元を投入して建設された世界最長の海上大橋は2018年7月に正式開通の予定となっています。(写真、図は百度百科より)